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シンガポールと中国の狭間に立たされた【マレーシアフォレストシテイ計画】

はじめに

碧桂园森林城市‐ Forest Cityとは 

フォーブスが注目する新しい都市計画

シンガポール、中国、マレーシア、3者による駆け引き

結びに

はじめに

マレー半島の先端に位置し、一世代で発展途上国から先進国入りを成し遂げた都市国家【シンガポール】。
世界中から人-モノ‐資産が集まるシンガポールは常に拡大を続けており、近年では隣のマレーシア‐ジョホールバルにおいての大々的な開発‐【シンガポール都市圏】が知られております。

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(シンガポール本土と隣接するJohor Bahru- ジョホールバルは通勤生活圏として一体化が進められていた)

シンガポールの拡大は世界がビジネスチャンスと、捉えられています。その中で、世界最大規模の中国系開発都市企業である、Country Garden ‐碧桂园が中心となって、【シンガポール都市圏】に新しい都市、Forest Cityが作られつつあります。

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(拡大に伴い、シンガポールは都市圏を広げつつある)

以前ご紹介したシンガポールによる広州市における都市開発、知識城計画と反対の事例として、皆様へご紹介させていただきます。

碧桂园森林城市‐ Forest Cityとは 

フォレストシテイは、マレーシアのジョホールバル州に現在建設が進められており、マレーシアとシンガポールを区切る【ジョホール海峡】上に建設が進めれている人工島です。ジョホールバル州全体で進められている開発特区、イスカンダル自由経済特区に位置しております。

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(上記地図の緑色の部分がフォレストシテイである。シンガポールとは直線距離で2㎞の距離にあたる)

建設予定地はすべて人工島であり、ジョホール海峡上に、総面積30平方㎞に及ぶ3つの人工島の建造が進められております。人工島は4つの島で構成されており、①ハイテク産業パーク②居住及びレジャー地区③外資系企業優遇地区④展示会場地区となっております。

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(府中市の大きさが約29平方㎞。人工島の規模がわかる)

総人口は70万人を同地は目指しており、すでに第一期の建設は終了し、一般販売は終了しています。都市開発という意味では、ジョホールバル州では珍しくありませんが、70万人の人口を誇る人工島は世界でも稀有といえます。2019年段階で、2万戸の住宅地がすでに契約されています。

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(Google Earth による衛生地図。赤字部分が完成して第一期部分)

フォーブスが注目する新しい都市計画

日本ではまだあまり取り上げられていないフォレストシテイ計画ですが、海外メディアではすでに取り上げられつつあります。特にフォーブス誌では、【自然と調和した潜在力が最も期待される都市】として取り上げられています。

(立体的な交通インフラと、自然との調和が高く評価された)

フォレストシテイの命名の由来は、都市内に人工的な生態系を確立している点にあります。公園などの平面的な空間にとどまらず、ビルの外壁や屋上への緑化は勿論、微生物を利用した循環システム、動物などを放し飼いにするなど、生態系と都市の調和が進められています。

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(垂直緑化という年建設理念によって、森林城市‐FOREST CITYは建設された)

ジョホール海峡はマングローブ林などの豊かな生態系で知られており、加えてガーデンシテイといえるシンガポールの都市設計を大胆に発展させた開発計画では、1000億USドル以上の開発資金が投入されています。

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(【Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標】という社会課題と向き合っている代表例といえるでしょう)

シンガポール、中国、マレーシア、3者による駆け引き

フォレストシテイはシンガポール、中国、マレーシアの協力と協議の下に進められている計画です。わかりやすく説明します。

シンガポールにとっては新たな都市圏の開発といえます。高い不動産価格はシンガポール市民にとっての負担になっていました。これを解決するためには、シンガポールの国土外に都市圏を拡大するしかありません。     
シンガポールもフォレストシテイ計画へ期待を寄せており、新しい通関地点を設けることで、シンガポール市内とフォレストシテイの交通の利便化を推し進めています。

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(シンガポール政府が長年推し進めてきた、公立住宅‐HDBも増え続ける移住人口という課題を迎えている)

中国にとっては、海外移住の選択肢、そして中国企業の国際化という機会を得ることになります。もともとマレーシア‐シンガポールは中国系の華人で構成されており、移住にあたって言語的文化的な問題が低いといえるでしょう。
フォレストシテイは絶好の立地条件と、英語と中国語による教育環境、習得の容易な海外居留権など、好条件を兼ねそろえております。

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(東南アジアは、古くから華僑と華人が経済を握っていた地域でもある)

フォレストシテイの開発を手掛けるのは中国系のCountry Garden ‐碧桂园です。中国本土で、中国人移住希望者へ大々的な宣伝を行っておりました。販売状況によると現在の購入者の8割以上は中国大陸や香港からとなっています。

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(中国広東省佛山で起業した同社は,
フォチューン500に入っている)

加えてシンガポールにほど近い場所に中国人コミュニテイが出来ることは、シンガポールに進出を進める中国系企業にとっては、重要な足掛かりになります。中国資本の教育機関や産業パークも併設されることで、シンガポール都市圏の利点を広く活用することが可能になりました。

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(一帯一路における、象徴的な取り組みともみなされていました)

さて開発地を提供するマレーシアにとっては、状況が複雑化しております。フォレスト計画ではマレーシアのナジブ首相時代から推進され、Country Garden Pacificview Sdn. Bhd. (CGPV)というマレーシア現地企業も参画しました。加えて同社にはジョホールバル州の君主であるIbrahim Ismail スルタンも出資しています。

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(マレーシアでは各地方ごとに、世襲の君主であるスルタンが設けられている)

当初はマレーシア当局としても、不動産購入者への永住権などを付与、さらには税金などの優遇政策をとっていました。しかし、高騰する不動産価格によりマレー系住民が購入できないという問題や、中国系コミュニテイ成立による政治情勢の変化を恐れて、マレーシア政当局も条件の変更を申し入れています。

結びに

シンガポール式の都市を、中国系企業が作り上げ、マレーシアに生まれつつある。複雑な条件と思惑が絡みつつある取り組みといえるでしょう。   
かつての中国本土の広東省や福建省から、夢をおって東南アジアへ渡ってきた人々のように、フォレストシテイが夢の大地になることを、一人の海外移民として私は待ちわびています。

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(ASEANに龍の時代がやってくる!)

参考資料および画像元


筆者連絡先

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