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日本人はなぜ中国から減りつつあるのか?

はじめに
海の向こうのチャンスを追って                    中国ビジネス環境の変化                       グループ化される在中日本人           
          むすびに

はじめに

アメリカ‐タイ‐シンガポール、日本企業や日本人が進出してきた国は世界に数多くあります。中でも隣国である中国への進出企業数や在留邦人は、長く他地域の日本人社会を大きく突き放す規模でした。進出企業数は全土で約1万4千社、在中国日本人も最盛期には30万人(一時滞在者含む)を超えていたといわれています。

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(上海‐広州‐北京‐香港といった大都市を中心に日本人社会は形成されてきた)

2020年現在、日本人の数は一貫して減少傾向にあります。この傾向には様々な要因があるのでしょうが、今回はキャリアコンサルタント‐企業コンサルタントに携わる人間としても、分析させていただきます。

(注:本資料の画像はすべて引用であり、各種詳細条件についても簡略化してわかりやすくしてあります)

海の向こうのチャンスを追って

日本人の海外進出、特に中国への進出は私たちが想像するよりはるかに古くからおこなわれてきました。筆者のご先祖様も、1930年代には上海で一獲千金の夢を追う日本人の一人です。

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(戦前の上海租界。フランス/イギリスの勢力圏内にも日本人は根を張っていた)

ただごく普通の日本人が中国にやってくるようになってきたのは、90年代以降の日本企業の中国市場進出がきっかけでしょう。この際に日本企業が中国に進出したのは【世界の工場としての製造基地】または【系列企業や取引先企業との連携】のためでした。いずれにせよ、中国国内での商権よりも生産という目的が主流でした。

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(大量生産から中国国外輸出のための生産工場)

この時期には上海では定住日本人で5万人超で上海の日本人学校が世界最大の日本人学校へ拡大し、広州や深圳などでは日系の本田-豊田-日産などの自動車メーカの大生産拠点となりました。

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(かつて在外日本人生徒数が世界一位だった上海日本人学校)

2010年までがおそらく日本人の増加期で、30万人に匹敵する日本人が中国全土に居住していたでしょう。

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(沿岸部での経済が早期に発達したこともあり、外資系企業も集中して分布していた)

中国ビジネス環境の変化

さて10年代以降、中国のビジネス環境は大きな変化を遂げます。

①世界の工場から世界の市場への変化

90年代から10年代後半までで、中国ほど経済規模と個人所得両方の成長を両立させた国はありません。結果として安価な大量生産での経営は変革に迫られ、中国→海外のビジネスモデルではなく中国国内で利潤を上げる経営モデルが求められるようになりました。

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(一世代の間に、あらゆる経済水準が変化した)

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(100万都市の数で200都市以上を数えるようになり、農村と都市の人口比率も逆転した)

②強力な競争相手-中国系企業の成長

かつて中国国内においてビジネスのライバルは往々にして他の外資系企業でした。現在はご存じの通り、価格や品質/サービスにおいても中国企業との競争が激化の一途をたどっています。その中でいかに中国で利益を出せるようになるかという課題に、日本人会社員や経営者は直面しています。

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(皆さんもご存じの企業が多いのではないでしょうか?)


③外国人労働ビザの変更

私も中国で働いている外国人ですが、基本外国人は助っ人のようなものです。どこの国も雇用は自国の人間を優先しますし、実力がないと淘汰される存在です。その外国人が海外で働くためにはビザが必要ですが、そのビザ制度も大きく変わりました。

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(厳格化したビザ要綱)

中国も日本と同等の先進国を目指しており、能力のある外国人人材を求める傾向にあります。

30万人いた日本人も2020年現在はすでに12万人前後まで減少しました。若者内向き思想が、日本人の海外挑戦の課題といわれていますが、これだけ課題があれば人数が減るのもごく自然な流れです。

グループ化される在中日本人

変わりつつある環境の影響を受けて、中国の外国人と日本人は大きく数を減らしました。日本人は4つのグループに分けられますが、それぞれ受けた影響が違います。

①日本から現地の日系企業へ送り込まれたグループ

いわゆる駐在員や派遣員で彼らの役目は本社から与えられたミッションを現地で実行するという役割です。司令塔としての役割を駐在員は果たしており、3年から5年で別な任地や日本へ帰国します。

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(一定の任期後、移動する傾向が高い)

現地のマネージメントにおいて中国人人材が育ってきたこと、海外赴任費用の削減のために、駐在員の数は減ってきています。

②中国現地の日系企業で働くグループ

中国現地の日系企業で採用されたグループで、一般には駐在員と中国人社員の間に立ち働くことが多いです。海外赴任費用等が日系企業から支給されないという点、任期が無いという点から駐在員と異なっています。

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(任期が無いため、本人の意思で中国での在留期間が変わることが多い)

駐在員と同じく現地中国人材の成長、さらに日本語での業務ではなく中国語能力が求められることから、このグループも現在減少傾向にあります。

③中国現地の日本人経営者グループ

中国で独立した日本人の経営者グループです。多くは日系企業との取引が中心ですが、様々なビジネスに日本人経営者は取り組んでいます。

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(中国という異国での起業への挑戦)

現状、日本人経営者グループは非常に少ないです。筆者は2015年から中国にいますが体感だと、中国在住日本人の内300人に1人くらいの割合です。  中国でのビジネスチャンスを求めてやってくる起業家の方も多く、私もたくさんの方にお会いしました。日本以上の競争社会の中で勝ち残るには、経営モデル/資金/中国商習慣の理解/強運など多くの条件が必要でしょう。

正直な話、中国の日本人経営者が大きく増えるようなことはないと考えています。

④中国企業で働く日本人

現地の中国企業で働く日本人も、実は2種類に分類できます。日本人としてのビジネス感覚を求められる形式と、IT開発技術や料理人などの特殊な技術を持つ社員です。

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(日本で働く、外国人社員と同じ立ち位置)

ただし中国企業で働く場合は、社内言語がすべて中国語や英語になることはもちろん、自分自身で今後のキャリア形成や人生について向き合うことが必要になります。周囲に参考になる事例が少ないのと、外国人として社内で扱われることが多いように感じます。                  今後中国企業が成長するにつれ、長い目で中国企業で働く日本人は増えてくると思いますが、筆者の周りではあまり増えておりません。    

2020年までは【日本での就職活動が好調で海外就職の動機の低下】、【中国語能力が求められること】、【中国の物価が高くなっており貯蓄が難しくなったこと】、その結果志望者は増えていないのではないでしょうか?

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結びに

中国人7%、インド人6.5%、韓国人11%、日本人0.8%これは母国を離れている人口割合といわれています。日本という恵まれた環境のおかげで日本人海外人口はあまり多くはありませんでした。

多くの人口が海外に渡った中国では今優秀な海外人材の採用を本格化しつつあります。この機会に日本人が活躍できる社会づくりができるといいですね。

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