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【デジタル人民元】の到来!中国フィンテックのさらなる進化。

はじめに

デジタル人民元とは?

【キャッシュレス経済】【仮想通貨】との違い

デジタル人民元による社会変革

始まったデジタル人民元の流通

結びに

はじめに

中国では【WECHATPay】【Alipay】などのキャシュレス経済が,世界に先行して運用されています。日本でも【LinePay】,世界でもFace Bookの【Libra】など新たなキャッシュレス経済が発展している状況です。
その中で中国のデジタライゼーションは新たな段階に進みつつあり、ついに【デジタル人民元‐数位人民元】の運用が開始されました。
今回はデジタル人民元とは何かお話しします。

(本内容は筆者の調査内容をまとめたものであり、皆様の参考情報として取り扱いをお願いいたします)

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(当たり前のはずの現金が姿を消す?)

デジタル人民元とは?

【デジタル人民元】の説明にあたり、まずは一度貨幣のについて確認したいと思います。貨幣は原則として3つの機能を備えています。

①価値の尺度:100円のアイスクリーム,30万円の給与などモノやサービスの価値を表します

②支払い:日常の買い物決済や,ローン支払いなどの債務の返済など,価値移転に用いられます

③価値の貯蔵:モノやサービスは劣化して価値を損ないますが、貨幣そのものは価値を損いません

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(尺度、保存、支払い、3つの機能を私たちは日常的に用いてきた)

ではデジタル人民元は上記の機能をどのように置き換えるのでしょうか

①価値の尺度:デジタル人民元は中国で現在流通する人民元と同じ価値です。現金の1人民元と1デジタル人民元は等価として扱われます。

②支払い:デジタル人民元は日常生活での買い物や、銀行間での取引での支払い手段として使用されます。

③価値の貯蔵:通常の貨幣と同じように、価値が下がらないまま貨幣としての機能を維持し続けます。

目に見える紙幣や硬貨として扱われてきた貨幣の基本機能を維持したまま,目に見えない電子情報へ貨幣を置き換えたのが、デジタル人民元です。

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(貨幣の形状は時代とともに変化を遂げており、デジタル人民元はその変化の1つといえる)

【キャッシュレス】【仮想通貨】との違い

上記だけを見ると【モバイルペイメント】や【金融カード】、【仮想通貨】との違いが分かりづらいかもしれません。デジタル人民元との違いについて、ご説明させていただきます。

①銀行システムによらない決済システム

デジタル人民元は銀行口座や支払いプラットフォームとの紐づけを行わず直接決済に用いることができます。いわば国家が貨幣の流れをすべて管理することができます。

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(デジタル人民元は直接に最終決裁を行える)

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(従来のキャシュレス経済は、決済間にプラットフォーム等があり、金融機関の介入が不可欠)

②アプリやプラットフォームでの登録が不要

デジタル人民元は中国の【中央銀行‐央行】が発行する人民元と同一の貨幣であり、使用にあたってはほかのアプリの登録が不要です。
デジタル人民元をアカウントを開設すれば,即座に使用を開始出来ます。
従来のプラットフォーム運営母体やアプリ運営会社が介在しない為,機密性と秘匿性を維持しての使用が可能です。

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(デジタル人民元のアカウント写真。中央銀行運営のアカウント登録のみ)

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(キャシュレスで用いられる多様なアプリや、プラットフォーム。いずれの場合も決済情報や個人情報等が、商業的に利用されている

③電波が入らない状況においても使用可能

デジタル人民元において、支払い記録の情報はデジタル人民元から短方向で送信されます。そのため電波が入らない環境でも使用可能です。

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(デジタル人民元は電波の入らない状況においても使用が可能)

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(キャッシュレスにおいては、支払い側と受け取り側双方で決済情報を記録するために電波が必要)

④強固な安定性

情報の秘匿性や、金融機関との非連結などの点を理解された方の中には、ビットコインをはじめとする仮想通貨との類似点を発見されたでしょう。

デジタル人民元と仮想通貨との違いは、国家が保証する法的価値を持つかどうかということです。そのため貨幣価値の暴落や暴騰を防ぎ、価値を一定に保たせた上で、広く流通させることができます。

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(デジタル人民元は国家が価値を保証している貨幣であり、投機の対象などになる商品になりずらい)

一方で仮想通貨は貨幣として扱われることもありますが、投機の対象の商品として扱われ、貨幣としての価値を維持することが難しいです。これは仮想通貨の法的地位が保証されていないことが原因の1つといえます。

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(仮想通貨は民間の情報ネットワーク上によって、価値を保証されており、法的地位は脆弱であるといえる)

デジタル人民元による社会変革

さて実際にデジタル人民元は、社会をどのように変えるのでしょうか?いくつか実例をご紹介させていただきます。

①強固な金融セキュリテイの構築

デジタル人民元は決済の高い機密性、さらに貨幣の流れを追うことができる追跡性を持っています。そのため不正な決済や、サイバーセキュリテイの強化が期待されています。

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(マネーロンダリングや脱税をはじめとする金融犯罪の減少)

②貨幣流通負担の減少

私たちが使っている紙幣や硬貨などは常に新しい紙幣や硬貨を発行する必要があり、また発行した貨幣の流通量などを常に管理するための多くの負担がかかります。デジタル紙幣を導入することで、多くの負担を減らすことができるでしょう。

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(発行する、社会へ流通させる、回収する、流通量を管理するなど貨幣制度維持にかかる負担は非常に大きい)

③効率的な経済政策

より良い国造りのためには、金融政策をはじめとする経済政策が重要になってまいります。デジタル人民元によって、より効率的な金融政策を実施、ひいては健全な貨幣の流れを生み出せます。

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(国家の経済を正しく把握、管理することで適切な経済政策を実施し得る)

始まったデジタル人民元の流通

歴史的に大きな意義を持つデジタル人民元ですが、現在運用がされているのは中国の4都市です。
現地の公務員への給与支払いや、各種小売店舗や銀行での運用管理が進められています。

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(成都市、深圳市、蘇州市、雄安区の4地域でデジタル人民元は流通と使用が開始された)

14億人の人口を抱える中国は地域によって経済力や購買力が大きく異なり、現地の状況に合わせた段階的なデジタル人民元の導入が進められています。

デジタル人民元の導入は、従来の実態貨幣の即座の廃止や、キャシュレス決済の規制に直接はつながりません。ですが多くの金融サービスや実態経済がデジタル人民元の変革の波に対応することは不可避と考えられています。

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(デジタライゼーションによる中国金融サービスは、今後も淘汰と進化が予想される)

結びに

世界経済の15%を担う中国。イノベーションと積極的な外交政策を行っている昨今の状況を見るに、デジタル人民元が与える影響も巨大なものとなるでしょう。

筆者連絡先
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Wechat ID:YUKIKATOU888



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