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金星

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2019年1月の記事一覧

解放された夏の 柑橘の房は ひとり帰って来る 冬の山小屋に 井戸水はすべて汲まれたあと 全裸で刻みだす 乾いた時間 おかえり、と青色の深い階段 ひんやりと、足裏に馴染む円盤 視界に現れた水面に滑り込み、落ちたあと ここまでの案内を誰が教えてくれたのか? 名付けることを許したのはあなたでした 名前がなければ地図には記されない     彼女達は門を構築している     日暮れに紳士を労い     夜明けに可愛い声を送り出している     ひびのない柔和な記憶が水路を操る 君

代替

この世は明日で幕引きだというのに 誰かの人生に出会うということは 夢だったはずのわたしの時間が 一瞬のうちにすべての色を献じて 永遠を引き受けるということ

蟹座の満月

一度書いて、そのあと取り下げて、 「何も消すことはなかったな」と思い直したので、再投稿。 意地悪さと 残酷さと  茶目っ気の素性を現した手が  沿道中からかい続けて  差し色になって白い肌を飾る 宇宙3個分のわたしの苦難は あなたの前で霧散し 泉に変わる 父の前では矛と盾となった記憶を わたしを形作った時間を 地下で畳み 父であることの苦悩は 空を過って 目の前の 果てしなく遠い銀河 触れあわないようにして わたしはその瞬間 泉になる 自分に提供できないものの輪郭を知ら