TENET テネット 脚本 翻訳⑥【飛行機衝突作戦〜ホテルでのP・N会話】

※スクリプト P42〜P50

◎夜 フリーポートの外では

"主人公"とニールはブリーフケースを持って中に進んでいく。

◎オスロ空港の駐機場では

2人のスタッフ(マヒアと、仲間のロハン)は輸送機内に食事の台車を運ぶ手伝いをする。彼らは機体前方のサイドドアの高さまでカーゴを上げる。

◎フリーポート内では

"主人公"はニールについていき、セキュリティを通過する。額入り証書をスキャンする為ブリーフケースが検査に通される。

◎輸送機内では

マヒアとロハンは乗務員用の食事をドアから調理室に運び入れ、乗務員に指示を受けながらケータリングユニットに積み上げる。

◎フリーポート内のギャラリースペースとラウンジでは

職員がニールにエスプレッソを持ってくる。"主人公"は密かに腕時計を確認する。

◎輸送機内では

マヒアが乗務員の前方を指差す。

マヒア「それ食べたいのか?」

乗務員はマヒアの方を向く。マヒアは背後から乗務員を捕らえ、ロハンがコットンで乗務員の顔を塞ぎ、意識を失わせる。マヒアとロハンはケータリングトラックリフトの中に乗務員を転がす。マヒアは突然飛び出してきて他の乗務員に合図をする。

3人の乗務員がトラックリフトに投げ入れられる。ロハンはリフトを下へ降ろし、飛行機のドアを封鎖する。パイロットが点検を行っているコックピットにマヒアは近づき、銃を見せて、

マヒア「いいか、お前達」

◎フリーポートの廊下では

職員は、ニールと"主人公"を保管室の中へ案内する。

◎輸送機内では

銃を突きつけられ、パイロットは怯えながら格納庫から引きあげる。
ロハンは機体後部に固定されている金塊の山を確認する。

◎オスロ空港の駐機場では

ロハンは固定ベルトを切って金塊の山の陰にしゃがみ、手榴弾を取り出す。近くにあった金塊を掴んでベルトの辺りに押し込んでから、手榴弾のピンを引き抜く。

◎フリーポートの保管室内では

職員はニールと"主人公"をとある保管室に招き入れる。ニールはブリーフケースをおろして、額入り証書を取り出す。

◎オスロ空港の誘導路では

輸送機が誘導路を猛スピードで進んでいく。

◎輸送機内では

ロハンは機体の尾翼側にある金塊の後方に手榴弾を投げて、爆発する時にサッと頭を下げてかがむ。

◎オスロ空港の誘導路では

爆破で機体後部に穴が開く。駐機場中にガチャガチャ音を立てながら金塊がどんどん溢れ出てくる。

◎フリーポートの保管室内では

遠くの爆発音を聞きながら、"主人公"とニールは空気を溜め込み始める。職員が不思議そうに見つめる。

ニール(呼吸の合間に)「ヨガだよ」

◎輸送機のコックピット内では

マヒアはパイロットを席から追いやる。

◎オスロ空港の誘導路では

脱出シューターが勢いよく開いてアスファルトの上に引きずっているところに、パイロットが急いで転がり落ちていき、巨大な飛行機から離れていく。

◎輸送機のコックピット内では

フリーポートの後壁を目掛けて、マヒアは操縦桿を左に強く回す。

◎輸送機内では

ロハンが、機体前方にある着陸装置の後ろ側にハシゴをおろす。ロハンとマヒアが降りていく。

◎オスロ空港の誘導路では

マヒアとロハンは車輪の間を走って飛行機から離れる。巨大な飛行機はフリーポートのレンガ壁に衝突し、大爆発によって燃え上がる。

◎フリーポートの保管室内では

保管室は爆発によって施錠される。警報が鳴り響く。ドアがどんどん施錠されていく。ニールはパニックな様子で職員を見て、

ニール「10秒だよな!?」

職員はニールと"主人公"を押しのけて突然逃げ出す。2人は最後に空気を溜め込む。ガスのシューという音がする。
小さなバール状の部品を鍵開けの道具にするために、2人は証書の額縁を剥がす。2人は内扉のピッキングに向かい、パネルをこじ開ける。不正操作し、ドアがスッと開く。

◎フリーポートの廊下では

2人は苦しそうに喘ぎながら廊下に飛び出す。2人の後ろで扉がバタンと閉まる。次のピッキングに取り掛かるために隣の保管室まで急いで行く。扉が開き、2人は空気を溜め込んで、中へと急ぐ。

◎フリーポートの保管室2内では

棚やコンテナや壊れた物の少し先の曲がり角にある次の扉で立ち止まり、"主人公"はピッキングをする。しかしピッキングに使っていた部品が壊れてしまう。ニールは入って来た所へ駆け戻る。"主人公"は何とか頑張って部品の破片を取り除こうとする。ニールは最初の扉の所へ行く。

なす術がない。"主人公"は別の道具を使う。ニールは完全にパニック状態で扉を叩く。保管室の端にあるシャッター下部が壊れており、そこからハロゲン化物のガスがシューと音を立てて出ているのをニールが見る。

ニールはその方向に急いで行く。"主人公"は扉の解錠に成功する。ニールはよろめきながら走る。"主人公"はニールを引き寄せ扉の向こう側へ行く。

◎中門廊では

2人は息も絶え絶えで横たわっている。ニールが何かを聞き、辺りを見回して、

ニール(緊迫した囁き声で)「誰かいる!」

"主人公"は立ち上がり、廊下を移動していく。

2人はふたつの扉に辿り着き、隣に並ぶ。ロータス社の保管室である。2人はそれぞれ扉の解錠を試みる。ニールが解錠する。

ニール「手を貸そうか?」

"主人公"は扉が…開かない。

主人公「その言葉を待ってたよ」

ニールは身体を寄せる。『エンター』になり、扉が開く。

◎ロータス社の保管室内では

"主人公"は、部屋の中に設置された長い窓ガラスの仕切りの片側に入る。ニールは全く同じ作りのもう片方の部屋内にいる。ガラスには銃痕がある。それぞれの部屋の突き当たりには、回転ドアで密閉されているような筒型の装置がある。"主人公"は割れたガラスをパリッと踏む。

ニールはガラスの向かい側の壁にある銃痕を見ている。ひとすじの煙が銃痕の辺りに集まる。ニールが手を伸ばすと、

主人公「触るんじゃない」

ニール「一体何が起こったんだ?」

"主人公"は分解されている床の上の自動拳銃を見る。それを拾い上げ、考えて、

主人公「まだ起こってない」

ニールは訝しげに"主人公"を見つめる。回転ドアからブーンという大きな音がし始める。"主人公"は足元で動く破片を見る。煙が集まってくる。回転ドアが起動し、開く。筒型の装置から、ガスマスクをつけた黒武装の人物が、《後ろ向き》に飛んでくる。"主人公"が手に持っている自動拳銃を掴むために、その人物は《後ろ向き》に手を伸ばす。

ニールの方では、"主人公"の方に現れた人物とそっくりな黒武装の者が《前進》で飛んでくる。ニールを突き飛ばし、保管室の扉へと移動する。

銃のスライド部分が、《逆行》の人物の手の中に飛んでくる。"主人公"の手の中で銃を組み立て直し、弾倉が飛んできて弾を込める。バン!

壁からガラスを通って弾丸が吸い込まれる。銃痕が直っていく。"主人公"は《逆行》の人物と組み合う。逆行の動きは、この世の者ではないようなあり得ない動きである。

ニールは保管室の扉を出て追いかける。

《逆行》の人物は、先程の隣の銃痕に"主人公"の頭が来るように、横向きに引き寄せる。バン!"主人公"の頭をちょうどかすめる所に撃ち、ガラスが舞い上がる。

◎フリーポートの廊下内では

ニールは廊下で《順行》の人物を追いかける。

◎ロータス社の保管室内では

"主人公"は格闘している。《逆行》の人物は次の銃痕の方へ"主人公"を押し付ける。その人物の黒いガスマスクの中で、喉奥から奇妙な《逆行》のうめき声がしてくる。"主人公"がピックを手に取って《逆行》の人物の腕を刺すと、うめき声がピークに達する。"主人公"は《逆行》の人物の手から銃を叩き落とすと、扉から飛び出していく。

《逆行》の人物は"主人公"の腕の中に入る。《逆行》で引き寄せたとも言える。彼らが扉を通って《逆行》で動いている時は、「《逆行》の人物が押している」のか、「"主人公"が引き寄せている」のかが一見分からない。

◎保管室の廊下内では

《逆行》の人物は"主人公"を廊下に押し倒す(引き寄せる)。

◎フリーポートの廊下内では

ニールは走って角を曲がり、《順行》の人物のマスクを掴んで、外れる。我々からは見えないが、ニールは《順行》の人物の顔を見て驚く。そして来た道を走って戻る。

◎フリーポートの廊下内では

"主人公"と《逆行》の人物は格闘している。

◎フリーポートの保管室2内では

"主人公"と《逆行》の人物は棚やコンテナに激突する。"主人公"は銃を掴み、《逆行》の人物の頭に銃を構えると、

ニール(画面外で)「だめだ!!!殺すな!!!!」

"主人公"は止まる。ニールは歩み寄って、必死に、

ニール「話せば情報が掴めるんだ!!!!」

"主人公"は地面に《逆行》の人物を倒して、

主人公「何故ここに来た!」

"主人公"はガスマスクを剥ぎ取ろうとするが、固く固定されている。《逆行》の叫び声はどんどん大きくなる。"主人公"は《逆行》の人物の腕の傷口を押し付けて、

主人公「誰の差し金だ!!」

《逆行》の人物の《逆行》の叫び声は更に大きくなる。"主人公"は何度も何度も腕を蹴って、

主人公「俺達がいるのをどうやって知った!!!」

外から、バーン!壊れたシャッターの下から吸い込むように、《逆行》の人物に向かって空気が吹き抜け始める。《逆行》の人物はあり得ない動きで床を横切り滑っていって、シャッターの下がバタンと閉まる。《逆行》の人物がいなくなった後はシャッターが直っている。

"主人公"とニールは互いに見つめ合って、

ニール「もう行かなきゃ」

◎オスロ空港の駐機場では

輸送機のジェットエンジンの一つが緩んでいるが、未だに推進力があり、揺れ動いて、非常時供給に被害が及んでいる。これ以上の突進を避けるために、救急車が横滑りしながら斜めに停車する。

マヒアとロハンは離れたところに立ち、制服を着た沢山空港スタッフ達と一緒に大混乱の様子を見ている。

◎フリーポートの中と外では

救急救命士が職員を追い越して急いで行く。

◎フリーポートの保管室内では

ニールはもう一つの扉に移動して鍵を操作し、警報が鳴る。

主人公「もう1人の男はどうした?」

ニール「僕が始末したよ」

扉が開く。2人はもう一つの保管室に滑り込む。

◎フリーポートの保管室の外側では

2人は証書の額縁を組み立て直した後、横になって「意識不明」になる。救急救命士が急いで入ってくる。


◎夜明け、オスロのホテルの客室内では

ニールは電話を切り、

ニール「マヒアとロハンはうまく逃げられたって。」
("主人公"の方を向いて)「僕は知り過ぎたのに、まだ生きてる。それって、僕を信じたってことで良いんだよね?」

主人公「それか、鈍くなったかだな。」

ニール「そんな、君は完璧だよ。」

"主人公"はニールを見つめる。

主人公「冷戦が起きてる。」

ニール「核戦争?」

主人公「時間的な戦争だよ」

ニール(懐疑的に)「タイムトラベルとか?」

主人公「いいや。物体のエントロピーを逆行させる技術なんだ。」

ニール「つまり、時間的順序の逆行のことだね。『陽電子は時間的に逆行が出来る電子』というリチャード・P・ファインマンやジョン・ホイーラー(※2人とも物理学者)の概念のようなものだ。」

主人公「そうだよ、正にそれが言いたかったんだよ」

ニール「物理学の修士号は持ってるんだけど…」

主人公「おう、その調子だぞ」

ニール「逆行の技術がもたらす影響は…」

主人公「超機密事項だ」

ニール「で、何で君は僕を仲間にしてくれたの?」

主人公「俺達で、絵画と銃弾の箱を見つけようと思ってたんだよ」

ニール「君は僕と同じくらいびっくりしてたよね」

主人公「ムンバイに戻って答えを見つけようと思う。君は仲介役にする。でも、覚えておいてくれ。君にとって、全てはプルトニウムにあるということを。やり遂げたその時には、彼らは君を殺す。」

ニール「結局、君が僕を殺す役割なんじゃないの?」

主人公「俺が決められることだったら、どんなにいいかって思うよ。」

ニール「僕もそう思うな。君になら、って。」


参考元スクリプト
↓↓↓

https://www.scriptslug.com/assets/uploads/scripts/tenet-2020.pdf



更新が遅くなりましたが、空港後編〜ホテルでの会話までの翻訳でした🙇🏻‍♀️

プロタゴニストに絶対に死なれたくなくて、すごく必死になるニールに心打たれますが、
あの興奮状態の中でもニールの言葉を冷静に受け止めて撃つのをすぐにやめるプロタゴニストも良いですよね。


そして、2人の信頼関係が厚くなったホテルでの会話。
黄昏時でも、宵でもなく、夜明けでの会話です。


夜明け-Dawn-には、『始まり、見えだす、分かりだす』という意味もあります。

(この時のプロタゴニストにとっては初めて)逆行の人物と対峙したことで、今後どのように答えを見つけるか見え始める。
という意味合いと同時に、
ニールとの厚い信頼関係が築かれる大事な『始まりの夜明け』だったのではないかなと感じました。

また、プロタゴニストが
「僕が君の運命を決められたらいいのに」
という趣旨の発言をする時、
劇中ではジョン・デヴィッドが僅かに目を潤ませていたのがすごく印象的でした。
その直後のニールは、真剣な表情で「僕もそうして欲しいよ」と率直に伝え、
その返答に少し照れ笑いするプロタゴニストの様子もグッと来ました…


レストランでの格闘シーンも空港での格闘シーンも、脚本ではシンプルに表現されていますが、
劇中ではかなり時間を取って見せてくれるので、
脚本を読むだけでも場面が目に浮かんで興奮してしまいます。

此処までお読み下さりありがとうございました!
空港のシーンは大好きなので興奮状態のまま書き起こしたため、推敲の手が及ばずに乱文極めてしまってたらすみません😭

次回もお付き合い頂けたら幸いです😊