TENET テネット 脚本 翻訳⑤【フリーポート視察〜計画】

※スクリプト P35〜P42

◎日中 校門の外では

キャットは、息子のマックスに話しかけようと屈んでいる。子守が戸惑っている。

マックス「ポンペイ遺跡に行って溶岩を見るってアナが言ってる」

キャット「一緒に行くのよ。私も一緒。」

マックスは子守の方を見上げる。キャットはマックスを強く抱きしめる。子守はキャットの肩を叩く。車が去っていき、キャットは息子に笑顔を向けながらも目に涙を浮かべている。キャットは電話を取り出し、発信する。するとキャットの背後から着信音が聞こえる。

"主人公"がいる。

主人公「君をびっくりさせるって言っただろ。可愛い子だね。」

キャット「マックス。私の全てよ。」

主人公「絵画はどこにある?」

キャット「オスロ。空港よ」

主人公「空港?」

インサートカット:ロータス社の車が空港の駐機場を渡り、坂を降りていく。

キャット「フリーポートって何か知ってる?」

主人公「手に入れた絵画の保管施設?」

小綺麗なオスロフリーポートの施設内で、新しいクライアントを迎える為に職員が立っている。

キャット(声のみ)「まだ課税されてない絵画のね。私達はロータスっていうネットワークの会社を始めたの。アンドレイが建設し、着実に育て上げ、私はクライアントを招く役目。その施設は租税回避地なのよ。」

そのクライアントはニールだ。警備装置を見に訪れたのである。

主人公(声のみ)「クライアントは落札した絵画を見られる」

◎日中 オスロのオペラハウスの外では

"主人公"はオスロのオペラハウスの屋上に立ち、ニールに説明をしている。

主人公(声のみ)「輸入しないことによって脱税してる」

ニール「絵画用の乗継ロビーみたいなもの?」

キャットの場面に切り替わり、路上で、キャットが"主人公"に説明している。

キャット「絵画、骨董品、価値のあるものなら本当に何でも。」

主人公「何でも?」

キャット「合法的なものなら、何でも…」

そして"主人公"がニールに説明する場面に戻る。

主人公「でもスイス銀行みたいな感じ。不透明な。」

キャットの場面に戻って、

キャット「ロータス社はオスロのフリーポートに資産があるの。おそらくそこにあるんだと思う。」

主人公「おそらく?」

オスロの場面に戻って、

ニール「おそらく?」

キャットに戻って、

キャット「私達は1年に4、5回はそこに旅行してる。」

主人公「絵を見に?」

キャット「で、アンドレイの様子を見ていて、絵が重要じゃないんだいうことが分かった。」

主人公「じゃあフリーポート自体が目的か」

キャットは頷く。

◎日中 フリーポート内では

職員がニールを豪華なギャラリーに連れて行く。

職員「フリーポートはどこもただの倉庫ですが、ここなら、本当の意味で安心して資産を享受していただけます。」

そして、ドアを通り、曲がり角のある廊下へ。

職員「保管室の構造はペンタゴン(死角を減らすような構造)を基にしており、それぞれの保管室が他の保管室に干渉しないような独立した構造になっております。一つの保管室が被害を受けても、他に被害は及びません。」

職員とニールは廊下内でとあるドアに辿り着く。職員は親指を使ってドアのロックを解除する。

職員「クライアント様は、生体認証を使って駐機場から直接入ることが出来ます。」

ニール「ターミナルから?」

職員(困惑して)「自家用機からですよ」

ニール「そうか」

職員がドアを開けて入る時にニールは鍵をチェックしている。

◎フリーポートの出荷区域内では

かなり大きな出荷区域は、輸送コンテナで一杯になっている。

職員「当社の物流部門は、税関検査を受けずに他のフリーポート間を行き来しております。」

ニールは、タリンに出荷するマークが付いているロータス社のコンテナに気づく。

ニール(声のみ)「何を見つけてほしいの?」

◎日中 オスロのオペラハウスの外では

主人公「本当に知りたい?」

ニール「わかんない」

主人公「鉛入りのグローブをいくつか欲しい」

ニール「まじか。核兵器?」

主人公「視察する時に…」

◎フリーポート内では

ニールは保管室のうちの一つを案内されている。

主人公(声のみ)「…防火装置をよく見てきてほしいんだ」

ニール「紙が損傷しやすい原因は…」

職員「火ですよね。勿論…」

ニール「僕が言おうとしたのは、スプリンクラーの消化設備の水による損傷だよ」

職員「スプリンクラーは使用しておりません。(通気孔を指差して)施設は、数秒以内ですべての空気がハロゲン化物のガスに取って代わって充満します。」

ニール「見せてくれる?」

職員「もしやったら、窒息死しますよ」

ニール「ここにいるスタッフはどうするんだ?」

職員「ハロゲン化物は保管室でしか充満しません。スタッフは廊下に出ればいいんです。10秒間という警告が出ます。」

ニール「10秒しか与えないのかい?」

職員「私達よりもクライアント様の資産に価値がありますし、その為に私達がおります」

ニール「おやまあ!」

職員「えっと、お客様もそれがお望みでしょう」

◎オスロ空港内では

ニール「保管室のドアは耐火性で油圧式クローザー、あとシンプルな鍵と電子制御装置があった。封鎖されれば、びっくりするくらい簡単だよ。」

主人公「なんで封鎖されるの?」

ニール「出力が安全装置に切り替わってドアの外側を密閉させる。でもドアの内側は初期設定の状態に戻るから、ロック解除できるんだよ。ほんっと朝飯前だよ」

主人公「朝飯前?空港のセキュリティの中にいるのにね。武装襲撃とかより気候変動の方が大事なのかなあ」

ニール「で、その周辺一帯の封鎖を仕掛けるのにどうやって火力を出す?」

◎日中 オスロ空港の、混雑した空港バスでは

"主人公"とニールは、駐機場越しにフリーポートの構造を見ている。

ニール「フリーポートの後壁かあ…」

"主人公"は、ニールが微笑みだしたことに気づく。

主人公「何か思いついた?」

ニール「気に入ってくれないと思う…」

◎オスロの街路では

"主人公"は不信感を持ってニールを見る。

主人公「君って飛行機を墜落させたいの?」

ニール「空からじゃないよ、そんなに大袈裟じゃない。誘導路から飛行機を走らせて、後壁を破って、火事を起こしたいんだ」

主人公「どれくらい大きい飛行機?」

ニール「うーん、そこは少しだけ大袈裟だよ。」

"主人公"とニールはハーバーフロントベンチに座る男に近づく。

ニール「彼はマヒア。マヒアのチームが飛行機を操縦する。」

主人公「それって乗客が乗ってるんじゃ…」

マヒア「『Norskfreight(劇中の架空の輸送航空会社)』だ。フリーポートの西側にある格納庫を使用してる」

主人公「輸送機を衝突させるの?乗務員はどうするんだ?」

マヒア「脱出シューターを出して、放り出す」

主人公「動いてるのに?」

マヒア「問題あるのか?別に大丈夫さ」

主人公「なんか…大胆な感じだね」

マヒア(笑顔で)「『大胆』は良いことだね、イカれた奴って言われるかと思った」

主人公「で、もし捕まっちゃったら?」

マヒア「捕まらないさ」

主人公「もしも、だよ」

マヒア「みんなテロだと思うだろうけど、誰も死なない。すぐに本国送還させるから、その手続きに明け暮れる。ほぼニュースにもならないだろうな」

ニール「君が起こす爆発の大きさにもよるんじゃない?」

マヒア「ここでなんと、金塊の出番だ」

主人公「金塊?」

ニール「『Norskfreight』は月に一度、国庫の金塊を出荷してるんだ」

マヒア「輸送機の後ろ側を吹き飛ばして、金塊を滑走路に落とすんだよ」

ニール「誰も建物の方なんて見ない。君に保証するよ。」

日中 オスロのホテルの部屋の中では

ニールは大きく呼吸して、胸いっぱいに息を吸い込む。マヒアはストップウォッチをはかり始める。"主人公"は計画を練っている。

主人公「ペンタゴンの中心部の空間が大き過ぎる。図案に描かれてない何かがあるはずだ。」

ニールが息を吐く。マヒアが時計を確認する。

ニール「保管室の中の保管室?」

主人公「多分ね。」

マヒア「85秒だ」

ニール「充分だな」

マヒア「もし走るとしたら?("主人公"に向けて)息を溜めて」

"主人公"は呼吸を荒くする。


参考元スクリプト
↓↓↓

https://www.scriptslug.com/assets/uploads/scripts/tenet-2020.pdf


今回はフリーポート視察と飛行機衝突計画編でした。

劇中だとニールは上流階級の英国紳士っぽい出立ちで視察しますが、
自家用機の発想がパッと浮かばず「駐機場からターミナルに行ってフリーポートに?」と思ってしまったり、
英国っぽく「Blimey!(字幕だと"なんとね"。驚いた!とかおやまあ!とか、OMGみたいな感嘆詞)」と反応してみるものの、職員にとっては「えっこの人もクライアントなのに他人事な反応だな…」と捉えられてしまっていたり、ニールの庶民的な感じが出ていて個人的に好きな場面です。

次こそは一気に飛行機のシーンに突入します!
いつもより長くなるかもしれませんが、またお読みいただけたら嬉しいです🙇🏻‍♀️✨