TENET テネット 脚本 翻訳⑨【カーチェイス計画〜セイター唾】
※スクリプト P70〜P76
◎日中 タリンの繁華街通りでは
"主人公"は混雑した道をニールと一緒に歩く。
主人公「金塊から何か見つかった?」
ニール「今日の相場で30万、型キズもあって不鮮明。何も見つからなかったよ。宇宙から来たみたいな感じ」
主人公「もしくは、未来かも」
ニール「どうやって?」
主人公「デッドドロップさ(スパイ等が使う品物などの秘密の受渡場所)。タイムカプセルを埋めた場所を送信し、逆行物質を掘り起こして回収してる」
ニール「特定の瞬間に送るのか。セイターはどこに埋めてるの?」
主人公「何世紀に渡って邪魔されないような場所さ。土のサンプルからは何か分かった?」
ニール「北ヨーロッパとかアジアの土で、放射線を浴びたやつ。乾いた血はヨーロッパ人のだった。」
主人公「広範囲だなあ」
ニール「まだ序盤だよ」
‘’主人公‘’は、彼らがどこから来たかを考えている。そして前を見る。
主人公「その物質はいつ到着する?」
ニール「木曜日だよ。セイターはいつ到着する?」
主人公「分からない。でもここに来るはずだ」
ニール「積荷は強化トラックに載ってる。核の警察が重装甲のSUV車に乗って前後に配置してる。窓から押し入るのは無理だよ」
主人公「警察らが逃げることも不可能ってことだね」
ニール「どういう意味?分かんない」
主人公「分かるさ。街中を通る輸送車って、君的にどう思う?」
ニール「渋滞っていうのは予測不能な交通状況なんだし、奇襲を企てるのはほぼほぼ不可能だよ」
”主人公”はその渋滞の様子を見渡している。
主人公「確かに。輸送車は上空から監視されてる?」
ニール「ううん、GPSで追跡されてる。違う順路を行ったり寄り道したりすると、機動隊が駆けつける」
ニールと”主人公”は路面電車に飛び乗る。市外へ行く多車線道路を利用する行程を、”主人公”は検討している。
主人公「奥の手が必要だ。使わずとも銃で威圧する。遅そうに見えて実は速い車と、4台の大型車両が要る。全部違うやつ。路線バスとか、長距離バスとか、18輪トラックとか…」
ニールは頷く。
主人公「そのうち一台は絶対消防車にする」
ニールは興味深そうに見上げる。
主人公「何よりも、記録に残さずに遂行しなくちゃいけない。電子でも、書類でも駄目だ。物質を奪う最中にセイターに奇襲されるのは避けたい。セイターの無知が唯一の防御だ」
◎日中 タリンの道を通るベンツの中/外
キャットは後部座席でセイターの隣に座り、窓の外を眺めている。
セイター「オスロからの回収物はすべてここに出荷されてくる」
キャット「なぜ私をここに?」
セイター「作品を鑑定する奴は誰も信用していないものでな」
◎日中 タリンの外れの波止場エリアにあるフリーポートの外では
ベンツがタリンのフリーポートに到着する。ボディガードが数名出てきて、セイターは中へと入っていく。キャットは、エンジンがかかったアウディが停まっているのを金属のフェンスの向こう側に見つつ、セイターについていく。アウディの運転手は酸素マスクを装着している。
◎タリンのフリーポートの保管庫内では
キャットが入室する。セイターは、武器だらけのテーブルのそばにいる。
セイター「分かるか、キャット?私のお気に入りだ…」
セイターはマシンガンを手に取る。
セイター「焦げ臭いが、まだまだいけるだろう?」
キャットは、こんな武器は今まで見たことがないという様子で見つめている。
キャット「これは専門外よ」
セイター「そのとおり。お前には今まで関係のないことだった。だが、ここで我々の世界と交差することになる」
キャット「アンドレイ、ここは何なの?」
セイター「分かっているはずだろう、キャット。この汚れた商売のおかげで、お前はその服を身につけ、息子は学校に通える。お前が買いたいものが買える所以だよ」
ボルコフ(ロシア語で)「輸送車が10時に繁華街に到着します」
セイターは腕時計を確認し、ボルコフに頷く。キャットの方を向く。
セイター「行く時間だ」
キャット「あなたとはどこへも行かない」
セイターはマシンガンをテーブルに叩きつける。キャットが怯む。セイターが振り返り、怒って、
セイター「私を見て、覚えておくが良い。虎に口答えをするな。虎を称賛するのだ。お前に襲い掛かり、真の姿を思い知るまではな!」
セイターがキャットの方に向かっていく。キャットが銃を引き抜く。
キャット「やめて…」
◎日中 タリンの通りでは
前後に護衛が付いているノーマークの大型トラックが、繁華街の道路でアイドリングストップをしている。
◎タリンの通り、BMWの中/外
"主人公"とニールは輸送車が交差点を横切るのを見て、渋滞を縫いながら車を前進させる。ニールが無線機を持ち上げる。
イエローチームの運転助手(無線機に話す)「グリーン、2分だ」
◎タリンの通り、グリーンチームのトラックの中/外
グリーンチームの運転手が、無線機を持つ運転助手に向かって頷く。
グリーンチームの運転助手「了解」
グリーンチームの運転助手は無線機をおろし、大きな自動ライフル銃を引き抜く。
◎タリンの通り、BMWの中/外
"主人公"は腕時計を確認する。ニールが無線機に話す。
ニール「イエロー、60秒だ」
イエローチームの運転助手(無線機越しに)「60、了解」
ニール「ブルー、45秒だ」
ブルーチームの運転助手(無線機越しに)「45、了解」
ニール「レッド、すぐに行く」
◎消防車の中/外
レッドチームの運転手と運転助手は消防士の格好をしている。
◎タリンの通り、BMWの中/外
BMWは車線変更して追い越し、核の輸送車の後ろにつく。グリーンチームの平台トラックがいる道を輸送車が通り過ぎる時に、輸送車はそのトラックの右横に車線変更し、並走する状態になる。
◎日中 保管庫の中では
セイターはキャットの方に歩み寄る。
キャット「動かないで!」
キャットは銃を持ち上げてセイターに向ける。
セイター「お前は私を殺さない」
キャット「前も殺そうとしたわ」
セイター「ボートから突き落としたんだったな。だが冷酷に撃つことはできないはずだ」
キャット「アンドレイ、私は冷酷じゃない」
セイター「ああ。だがお前には怒りが足りない」
セイターはキャットにジリジリと詰め寄る。
セイター「怒りは徐々に絶望に変わっていくからだ。お前の目には見える…」
セイターはキャットに軽々しく身振りをする。
セイター「…絶望が、な」
セイターはキャットの手から銃を叩き落とし、殴って、キャットが倒れ込む。
セイター「ひどい仕打ちだ。私の稼ぎでお前の身の丈以上の暮らしをさせているのに」
感情のまま、獰猛に、セイターはキャットに唾を吐く。
セイター「うんざりだ!!」
セイターはキャットの脇腹を一度蹴る。
セイター「私がお前を殺すべきだと思うのはいつなのか、知りたがってただろう?じきに答えが分かるぞ」
セイターはボルコフに合図をする。ボルコフはボディガードと共にキャットを抱えてドアの方へ運ぶ。セイターはイヤホンをひとつ耳につける。
セイター「何かあれば全て報告しろ」
ボルコフは頷き、立ち去る。セイターは大きな扉を通って行く。
セイター「ここは閉めろ!」
セイターの後ろで扉が閉まると、小さなのぞき窓がある赤い部屋の方に向かって歩き、その近くで影になっている場所を見つける。
参考元スクリプト
↓↓↓
https://www.scriptslug.com/assets/uploads/scripts/tenet-2020.pdf
先行デジタル配信がスタートし、劇場公開している箇所もだいぶ少なくなったので、
今回からタイトルに、どの辺りの翻訳なのかを省略して併記しています。
また、本文冒頭に、スクリプトのどの辺りのページなのかも書いていきます。
過去の翻訳も、同じように分かりやすく書き直しましたので、また見ていただけたら嬉しい限りです。
不定期更新ですが、次回もどうぞお付き合い下さいませ🚗🚛🚒