「ひげよ、さらば」感想 いつか必ず来る死、そして生きることへの執着
中島裕翔さん主演舞台「ひげよ、さらば」を見ました。ずっと前に千秋楽は終わっているのですが、ふざけた文章ばかり書いていたら真面目な文章を書けなくなってしまい、何度も書いては消してを繰り返していたらこんな時期に…。
フォロワーの特性上本稿を読む人の大半はジュニア担でしょうし、今作を見る人は私のフォロワーにはあまりいないと思うので見てない人にも分かるように感想文を書いていこうと思います。ってか、感想文って本来そうあるべきではある。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
PARCO劇場開場50周年記念シリーズ 『ひげよ、さらば』
蓬莱竜太演出 中島裕翔主演
舞台は野良猫が集団が住み着いている峠。ナミダという猫が野犬に襲われて死んだ数日後、元飼い猫のヨゴロウザ(中島裕翔)は記憶を無くした状態で峠に現れる。片目(柄本時生)はヨゴロウザを自分の集団に連れて行き、一緒に暮らすことに。
峠の食糧は限られている。これまで飼い猫だったヨゴロウザも片目と一緒にネズミを捕まえて飢えを凌ぐが、これから来る冬はさらに食糧が不足し、峠は厳しい局面を迎えると聞かされる。その上、集団の一員だったナミダが死亡した今、いつ野犬の集団が訪れるか分からない状況をみた片目は猫も団結して生活すべき、リーダーを立てよう、そしてそのリーダーをヨゴロウザにしようと猫の集団に提案する。しかしその時、野犬の集団の副リーダーである犬のナキワスレ(石田佳央)が猫の集落に現れる。自分は偵察にきた、そして犬はいつでも猫を皆殺しにできると話すナキワスレに対し、ヨゴロウザは犬の集団のリーダーである垂れ耳との対話を要望し、犬の集落に向かうことになる。
生きるか死ぬか、食うか、食われるか。食物連鎖の中の対話でヨゴロウザが見たものとは。
(え、なんかパンフみたいな書き方でじわじわくる)
生物として生まれた以上死ぬことは避けられない。作中で猫の生態について「通常猫は一度に何匹も猫を産む その中で生きられる猫はせいぜい1匹しかいない だから子猫を失ってもいちいち傷付かない」という話がある。それが、“自然の摂理だから”と。集落で暮らす「星から来た猫」も犬に食い殺されることは怖くない、それが“自然の摂理だから”と話す。
しかし、多くの人(猫)は死ぬことが怖い。だからこそ、犬に抗うために団結を試み、試行錯誤しているのである。このように“死”を避けることは不可能であるとわかっていながら、死に抗うことは矛盾しているように感じる。しかしヨゴロウザが犬の集落で自分の死を感じた時に痛烈に感じた彼の「死にたくない」という本能、これこそが、“猫らしさ”なのだろう。最後、猫の集団は峠を捨て、危険の多い街に潜んで生きていくことを選んだ。目の前に潜む犬の存在から逃げ1秒でも長く生き延びることを選択した猫たちに対し、冒頭で死亡するナミダは死ぬ事を受け入れた部分も対照的であるように感じる。つまり、目の前に迫った死を受け入れる事こそがその"生物らしさ"の本当の意味での喪失であり、いつか必ず訪れるその日まで、死に抗い続ける様子こそが猫、犬、そして人間…生物全てに共通する、生きるということなのかもしれない。
このテーマは役者の芝居からも感じることができた。劇中、猫を演じる役者は実際の猫のように四つん這いの状態で立ち振る舞うことが多い。その中でヨゴロウザを演じる中島はかなり“人間らしく”演じることが多かったのだが、その中でも数少ない、“猫らしい”芝居をしていたのは強烈に生きることへの渇望を感じている時が多かったように感じる。集落で生き抜くためにネズミを狩る時、自分を殺そうとするナキワスレと対峙する時、前の飼い主の元から逃げ出す時、そして、犬への恐怖心を忘れるためにマタタビを手にする時。そういった、生きることへの渇望こそが“猫らしくある”ということなのだろう。児童文学を原作とした「ひげよ、さらば」は、死への恐怖と同時に存在する“生への執着”という、動物のあるべき姿を描いているように感じた。
すでに映像俳優として高い評価を受けている中島裕翔は舞台作品において今作が初主演、舞台出演は2年ぶりとなる。演劇を見て一番感じたのは身体の使い方の上手さだ。倒れ込んだり地面を這ったりする場面がかなり多い作品だったが、おそらく彼の頭の中でイメージした通りの見え方とほぼ同じものを客席に見せていたように感じる。
これは彼が映像作品で培ったものもあるだろうが、それ以上に30歳にして15年以上のキャリアを持つ彼のHey! Say! JUMPとしての活動が芝居を立体的なものにしているのではないだろうか。中島にとって“演じる”というと映像の方が圧倒的に多いだろうが、この身体のこなし方は舞台演劇が一番活きることは間違いない。またどこかの舞台でその姿を見るのが楽しみだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
わ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜である調で文章書くのむずいよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!
なんか舞台の感想文って長々と書けちゃうんだけど、要点を絞って1500文字くらいで書いた方が読み返しやすいなーと舞台雑誌のレポを読んでて思ったので1500文字くらいでまとめてみました。
私はドラマや映画をほとんど見ないので中島裕翔さんの演技を見るのがほとんど初めてという珍しい人なのですが、これからも良い舞台作品に出てほしいな〜と思いました。
奇しくも次の観劇予定が同じくパルコ劇場、元Hey! Say! JUMPの岡本圭人さん出演「チョコレートドーナッツ」です。おそらく東山紀之を舞台で見る最後の機会になるので、これもちゃんと感想を書けるように真面目な文章を書く練習をしないとなーと思ってるけど、観劇しないと書くものが無いので書く練習もできないという。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?