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なぜ性表現は規制されるのか

ちょっと前に『○○の文化史』という本は記事のネタにしやすいと書いた。

こうなると買って放置している『○○の文化史』が気になる。その一冊が『性表現規制の文化史』であり、せっかくなので読んだ。

割と期待通りの内容で、何かの際には『空気の検閲』とセットで記事に使えそうな本であった。英米法の専門家がイギリスとアメリカを中心に、性表現に対する社会的なタブーの起源と変遷を解説している。

面白いのは性的な表現が悪とされる理由である。なぜ性表現はいけないものとされ、年齢制限がされているのか。これを明確に説明できる人は少ないと思う。そして、仮に説明できたとしても、それは当初の目的とは大きく異なっているだろう。

最初は経済的な理由から性規範が生じた。上流階級は継がせる財産がある。この財産を継ぐ相手が誰かと言えば子供だ。もし性に奔放であると、誰が自分の子供であるか分からない。だから性を管理する必要があった。一方で庶民は相続すべき財産が無いため、無理に性を管理する必要がない。だから野放図に性行為を楽しむことができる。

この違いにより、身分と性規範が結びついた。元は合理的な理由があって上流階級は性に厳しく、下層民は緩い。それが次第に逆転し、性を管理できているからこそ立派、管理できていない者は卑しいとされるようになった。

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