尻叩き教育の問題
また新しく『〇〇の文化史』を読んだ。
本書は主にイギリスとフランスにおける尻叩きの逸話を集めたものである。帯に「懲罰から愛の表現まで」と書いてある通り、尻叩きには様々な側面がある。また、「愛の表現」に至っては、する側とされる側の立場がある。行為としてはシンプルであるが、1冊の本となるくらい逸話を集めることができるわけだ。
今回は子供に対する「教育としての尻叩き」についての部分について書く。現在は教育目的であろうとも、体罰はあってはならないものとされている。これは道徳的にそう言われているだけでなく、法的にもそう定められている。日本では児童虐待防止法と児童福祉法の改正法が2019年6月に成立し、親権者であろうとも体罰は禁止とされている。
だが、逆に言えばつい最近まで法的には体罰は認めれていたわけだ。日本は体罰全面禁止となったのが世界で59番目と遅い方であるけれども、他の禁止国も歴史的な視点からすればあまり変わらない。早いところではスウェーデンが1977年に「尻叩き禁止」法を公布しているとはいえ、この風潮が広がったのは21世紀に入ってからだ。1996年にイギリスで行われた世論調査では、70%の人が体罰復活に好意的だったという。さらに当時のイギリス教育大臣は、ステッキ打ちさえも容認していたほどだ。それくらいつい最近まで、先進国でも体罰は認められていた。
ここでイギリスの名前を挙げたが、本書によればイギリスは尻叩き教育の本場であるらしい。それも素手ではなく、鞭を使った尻叩きが。これは伝統と慣習だった。家庭や寄宿舎で、子どもたちは鞭で尻を叩かれた。1956年には、イギリス医学協会の専門家がこう宣言している。
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