母の小さな旅

ここのところ、また毎日出かけたがる母。
一昨日は朝の電話では天気がいいから散歩、と言っていたが、施設からの電話では「買い物に行きたい」に変わっていた。お金がないので散歩だけにしてもらう。今日は私も暇だから、動向を監視できるだろうと思ったのだが間違いだった。
30分後、母は電車を待っていた。電車で帰ると言う。大丈夫だろうか。少し心配ではあったが、降りる駅を言って電話を切った。
しばらくしてGPSで確認したら駅を通り過ぎたところにいた。慌てて電話をかけたら、「終点まで行って乗り換える」と言う。終点からの電車は複数種あり、行き先を間違えると帰れない。それを告げると、通話を注意されたと言って切ろうとするので、降りたら電話して!と言って切った。
しかし電話はかかって来ず、気づいたら電車に乗っていた。慌てて電話をかけたが出ず、とうとう電源を切ってしまった…
こうなると位置も確認できない。もうなす術がなかった。

しばらくして弟から連絡があった。
以前住んでいた施設の最寄駅で電車を降り、いつも使っていたスーパーで買い物をして、以前の施設に帰ってしまったらしい。スタッフの方がすぐに弟に電話をくださり、弟がタクシーを手配して無事に施設に戻って来た。
前の施設で母は、「ちょっと休んでいいですか」「窓を拭きたい」と元の部屋に入ろうとしたが止められたと言っていた。まだ自分の住まいだと思っているのだろうか。

今日電話して、一昨日のことを聞いてみると、起こったことは大体覚えているが、間違いを認めようとはしなかった。
「人の話だと思って聞いて。あるおばあさんが散歩に出ると言って出かけたまま帰って来ませんでした。その人は電車に乗って前の家に帰ってしまっていたのです。この人のことどう思う?」
「あはははは。よくある話。」
「よくあるけど、もう一人では出かけさせられないよね。」
「お母さんは自分で帰れるよ。」
一昨日どれだけ迷惑をかけたかは全く頭にないらしい。
何かいい方法はないかな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?