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唐揚げ



僕には祖父母がいる。
誰にでもいたことはあるとは思うがそれはいい。

僕は母と似ているせいか折り合いが悪く、祖父母の家で叔父とも一緒に生活している。

さっき2階から降りてくると夕飯の美味しそうな匂い。

祖父が優しく、大きめの唐揚げを中華鍋であげている。
祖母はその手伝い。

玄関先では可愛い学生のお手伝いさんが、箒で掃除をしている。


ただ、祖母は声のトーンが少し高い。
"おばあちゃんじゃないでしょ"
と祖母に言うと
"おばあちゃんよ"
とやっぱり高いトーンで言う。

2階から後から降りて来た叔父に聞くと変じゃないよと言う。

そうか、と思い祖母に謝る。
"いいわよ"
と言う。

しかし祖父は料理をしているところを見た覚えがない。

それに気づくと2階に急ぐ。

僕の部屋には僕が寝ていた。
"塩ラーメン"
寝言を言っている。

なぜか気持ち悪い話だが、
愛おしく思えて頭を抱きしめる。
"頑張っているんだな"

"でも起きろ俺"

すると自分と思っていた俺の目が大きく猫目になる。

そこで目が覚める。

その世界に祖父母が生きていない。
もちろん可愛いお手伝いさんもいない。


一階に降りて夕食を作って居る叔父に、祖父母に(会った)事を言うと、"そうか"と言う。

よく見ると叔父が金髪だ。
もっとよく見るとそれはナスの切り身が頭について居る。

夢か。

起きよう。
起きよう。起きよう。


目が覚めるそれは夜中ペットボトルが転がって居る部屋。

幸せな夢の積み上げの様に見えて、今の現実を突きつけられる。


夢の中の祖父母は変わってしまっていた。
僕が忘れたのか、祖父母が夢に出れない様になったのか。
例えば輪廻の輪に入ったのかも知れない。

初恋の学生のお手伝いさんも元々存在してはいない。

あるのは歳をとって、苦しい現実を感じない様にして居る自分。

優しい夢によって、現実の厳しさを知らされた自分。


追い詰められて居るのか。

辛くなった。


そういえば唐揚げ夕飯に食べたな。

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