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夜が明けるまで。

夜中、一人でいると時々こういう気分になります、うさよしです。

深夜や夜明け前の静かな雰囲気等を楽しみながら読んでいただけると、嬉しいです🙌

⭐︎ご利用案内⭐︎
・利用報告は任意です。
 ご連絡頂けますと、聞きに行けるので助かります😊
・下記のクレジットを概要欄などに表記お願い致します。
 【クレジット表記】
 作品名:夜(よ)が明けるまで。
 作者:うさよし
 作品ページ: https://note.com/hondana00_okiba
【OK】
 多少の本文変更(読みやすいようにニュアンスや言い回しを変える程度の変更)
 一人称の変更
【NG】
 作品タイトルの変更

以下台本↓


夜(よ)が明けるまで。

寝苦しさに耐えきれず、生理的に喪失していた意識が戻ってくると
閉じた瞼(まぶた)の向こうでコツコツと響く音を聞く。

節約のためにと時間でクーラーが切れるように設定したのがまずかったのだろう。
暑さと湿気が眠りを妨げて二度寝はできず、仕方なく目を開けた。
カーテンから日の光が漏れていないところを見るに、外はまだ薄暗いようだった。

私が都会で一人暮らしを始めて3年と半年、
夏のどうにもならないこの寝苦しさだけは、今だに慣れずにいる。

肌にねっとりと張り付くような蒸し暑さのせいで
全身がじんわりと汗ばんで、不快でたまらない。

起きたばかりの重たい身体を引きずりながら窓に這い寄り、
そっと開ける。

瞬間、涼しい風が流れ込んでくる。
汗ばんだ肌を撫でるような、ひんやりとした感覚が心地良かった。

まとわりつく気だるさを押しのけるように
身体を起こし、立ち上がる。

冷蔵庫から程よく冷えたミネラルウォーターを取り出し、
ゆっくりと飲みながら窓の外を眺めた。

住宅街という事もあって、
昼間は人の声も、音も、色も、この場所に溢れ返っているのに、嘘のように静か。

夜明け前の深い群青の景色が、私を「一人だけの世界」に引きずり込んだ。

人はそれを「孤独」と呼ぶのだろうか。

ふと、手に持っていたミネラルウォーターに視線をおとす。
誰かの手で作られたペットボトルの中で
飲みかけの水が静かに揺れている。

そこに誰かの存在を感じられたなら
自分は孤独だ、と言い切れるほど独りぼっちではない、そう思う。

そう思う、はずなのに、
どうしようもないこの寂しさや虚しさはどこから来るのだろうか。

夜明け前の静かな街が、心の隙間を掻きむしるからなのか。

いや、違う。

どこにいても、誰かと一緒にいても、心のどこかでは
皆、深い群青色の孤独を抱えている。

それはきっと消えることはなく、私のそばに在り、
時折顔を出しては、狭い群青の箱庭へと心をさらっていってしまう。

だから、寂しさに呑まれないように、暗がりの道を歩いていけるように
繋がりを探し、見えない手に支えられながら、一人、生きていく。

顔を上げると、空が白んでいた。
もうすぐ、群青は明ける。


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