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今回コロナでわかったこと。動き始めた人、動かなかった人。

16年間、借りていたオフィスを解約した


「これは何かを変えろ、というサインだな」


 新型コロナウイルスがやってきて、緊急事態宣言が出て、真っ先に頭に浮かんだのは、この思いでした。せっかくなので、思い切ったことをやってみようと考えました。

 まず、4月末で六本木ヒルズレジデンスに借りていたオフィスを解約しました。東京にいるときにミーティングに使ったり、夜、仲間たちと集まり、ワインを楽しんだりしながら交流をする場所。人と会うためのプラットフォームのようなオフィスで、南青山オフィスから始まりトータル16年間、あることが当然のものでした。
 ただ、海外にいる時間が長いので使用頻度は高くないし、今後はソーシャルディスタンスコロナで、さらにその頻度が下がる可能性がある。移転も考えましたが、これはいいきっかけなのではないかと思って一旦ゼロリセットしてみたのでした。

 オフィスにあった荷物は、ほとんど捨てるなり、誰かに譲るなりして、8割削減しました。同時に自宅の荷物も減らして、トランクルームに入れていた、使われていないキャンプ道具なども処分しました。

避けていた動画配信をやってみた

 僕はコロナ前はYouTubeなどの動画配信にはまったく関心がなくて、むしろ敢えて避けていました。しかし、いろいろ応援できるのではないかと思って、デジタルで即効性のあるライブをやってみることにしました。

 コロナで大きく影響を受けたのが、旅館やホテル、飲食店や生産者など。僕が大好きなサウナシュランで1位になった佐賀の御船山楽園ホテルも、宿泊者が消えてしまいました。そこで、オーナーにも出てもらって、オンラインでサウナの中を見られるバーチャルサウナ体験を企画しました。



 EXILEの橘ケンチさんや黒木啓司さん、さらには飲食店のオーナーたちとトークライブをして、日本酒を盛り上げたり、九州を応援して地鶏を買ってもらったり、ナチュラルワインのセットを買ってもらったりもしました。

橘ケンチとのライブ

https://www.instagram.com/tv/CAuBrrNDHWS/

黒木啓司とのライブ

https://www.instagram.com/tv/B_rFXhHhHN2/

一瞬で2880本の日本酒が完売!

 一番大きな試みは、飲食店がダメージを受けて日本酒の世界が大変になっているということで、6つの酒蔵の蔵元と1時間ずつ6時間のインスタライブをやって、彼らの日本酒を6本セットにして1万4000円で販売したことです。

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 買ってくれた人には、この6蔵の蔵元とzoom飲み会で一緒に飲める、という企画を立ててみたのですが、限定480セットがあっという間に売り切れました。2880本の日本酒が、です。
 売り上げの15%の100万8千円は、医療従事者向けにトップシェフがお弁当を作って届けるスマイルフードプロジェクト(Smile Food Project)に寄付しました。

 何より驚いたのは、この企画、4月25日(土)に話を始め、4月27日(月)に実行したことです。こんなスピードでできてしまうのかと、本当にびっくりでした。

電子書籍22冊を無料で読めるように

 また、僕が出資しているサンシャインジュースという会社があって、都内に2つ店を出していました。しかし、コロナで営業を自粛し、閉じざるを得なくなってしまった。1.5kgの野菜を使って400mlのコールドプレスジュースを作るのですが、困るのは店だけではないのです。大量の野菜を提供している農家さんも困るのです。
 そこで、農家の野菜を買ってもらおうとインスタライブで呼びかけました。これは後に、クラウドファンディングにつながって、360万円近いお金が集まり、生産者さん達たちの野菜を買うことができました。
https://camp-fire.jp/projects/view/276616

 マラソンの大迫傑選手とはインスタライブをして、コロナの自粛生活で時間が余っている中、読書をどう効率的に活用していくか、というテーマで語り合いました。
https://www.instagram.com/tv/B_jJB12D8Bf/

 僕は74冊の本を書いていますが、そのうちの22冊を電子書籍で無料で読めるようにしました。電子書籍側の取り決めでは、無料にするには5月の1日から、ということでしたが、急いでほしいという僕の申し出に出版社も協力してくれ、4月10日くらいからどんどん無料になっていきました。

コロナは二極化を引き起こしていた

 今回コロナでわかったことがあります。新しく動き出した人と、今まで通り何も変わらなかった人がいたということです。僕のまわりの経営者を見ていると、できる人ほど速かった。どんどん動き出していました。

 例えば、僕がアドバイザーを務める東京レストランツファクトリーが運営する鳥幸という焼鳥店は、なんと焼台をセットにして焼鳥を売り出しました。


 家で自分でおいしい焼鳥を焼いてもらう。これが爆発的に売れて、1週間ほどで1000台。現在は4000台に達しました。
 しかも焼台が家にあれば、また焼きたくなりますから、コロナでまったく売れなくなった地鶏生産者の鶏を販売することにより、全国から継続的に焼鳥の宅配注文が入り、生産者を応援できるる。全国から、です。

 飲食業は苦しい、でもじっとして動くことができず、稼ぎを減らしてしまった店も多かった中、まったく新しいビジネスモデル、新しい稼ぎ方を作ってしまったのです。鳥幸はこれから焼台を1万台、売ろうとしています。今後は、店とこの物販の2本柱のビジネスになる。コロナで、新しい世界を実現させてしまったわけです。

  

 他にもわかった二極化があります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)でデジタルで進化した人と、アナログのままの人。
自分の頭で考えて行動した人と、国やマスコミの発表を鵜呑みにした人。
何か応援し、応援された人と、批判ばかり言っていた人。
新しいコミュニティを見つけた人と、今までのコミュニティを失った人。


 僕は、アフターコロナのキーワードは、これだと思っています。

 踏み出さないと、何も得られない。

やらないリスクのほうが大きい

 でも、新しい行動を起こすとか、新しい何かをやるとなると、なかなか踏み出せない人は少なくない。どうやって踏み出したらいいか、うまく踏み出すにはどうすればいいか、頭を悩ましてしまっている人も多い。
 そこで、僕はこう提言したいのです。

 単なる実験だと思え。

 実験はうまくいくときと、うまくいかないときがあります。でも、うまくいかなくても、必ず学びがある。何か新しいものがつかめる。

 失敗が怖い? でも、実は今はそんなにダメージはないことに、多くの人が気づいているのではないでしょうか。それこそ、インターネットやデジタルサービスを使ってみればいい。価格はどんどん下がってきています。なぜ、やってみないのか。
 僕はむしろ、やらないリスクのほうが大きいと思います。だって、何の学びもないから。成長もできないから。激しく時代が動いていく中で、それって一番危険なこと。最大のリスクです。

コロナが日本人に教えてくれたこと

 アメリカ留学から帰国後、僕は日本オラクルに転職して、衝撃を受けたことを覚えています。当時最先端だったネットワークコンピュータの事業部を希望して入社したのですが、それは創業者のラリー・エリソンが考えた、今のクラウドの原形でした。
 25年前です。PCのスペックは低い。何よりインターネット回線が遅い。でも、ネットワークコンピュータを発表し売り出してしまうわけです。最初は商品もなく、コンセプトだけなのに。とんでもない会社だと思いました。

 でも、アメリカのIT企業はみんなそうです。マイクロソフトもそう。グーグルもそう。100%のレベルで完成してないのに、β版としてリリースしてしまう。やりながら、どんどん良くしていく。インターネットが広がって、それがますますやりやすくなった。

 日本人や日本企業は、100点の完成版を求めすぎるクセがあります。でも、それは今の時代にはそぐわないのです。必要なのは、実験です。走りながら考えていくこと。みんなに協力してもらいながら、充実させていく。
 実はこれ、人生も同じです。最初から完成版なんて、目指せるはずがない。人生は壮大な実験なのです。じっとしている場合ではありません。動き出すことです。実験してみることです。

「巧遅は拙速に如かず」

 これこそが、コロナが日本人に改めて教えてくれたこと。僕はそう思っています。

本田直之


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