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課金に舵を切った サザンオールスターズの英断

新型コロナウイルスは、様々な業界において、積み上げてきたものを高いところから叩きつけて粉々にしてしまいました。CDが売れなくなった現代、コンサートなどのイベントを収入源としていた音楽業界にとって、もはや悲鳴ですら自粛という社会通念にかき消されるほど、痛手を受けてしまった状態です。

当たり前ですが、我々が享受する音楽は、アーティストから直接聞こえてくるわけではなく、そこには音楽を作り発表するまでに、様々な人や企業を通じて届けられるから、音楽業界が成立するのです。ライブひとつをとっても、アーティストの演奏だけではなく、舞台・設備・警備・照明・演出・グッズ・チケッティング・宣伝等、何十という企業が綿密な準備を重ねて、ライブ当日を迎えるわけです。

公演の延期を通り超し、キャンセルやチケットの払い戻しなど、ネガティブな対応に激務する音楽業界関係者たちがいることを、我々は情報として知っておくべきかもしれません。ただ、私にとって日本市場の動きで非常に解せないのは、YouTubeなどの無料提供の動きです。アーティストやアーティスト関連会社の判断によって、日本を元気に、自粛生活を楽しめるように、というCSR的な意図がある場合もあるでしょう。プロモーション用途もあるでしょう。例えば、宝塚歌劇団や松田聖子のように、私の好きな人々もYouTubeやSNSでオフィシャルチャンネルを開設し、ライブから数曲、もしくは一部をクリップするなど、適切なコンテンツを提供されています。おうち時間というだけではなく、既存のファンにとっては、「もっと見たい」という欲を掻き立て、状況が戻った時、ライブに足を運びたい、もしくはDVDを買いたいなど、音楽業界にとって非常によい連携が出来る場合も多くあると思うのです。また、ファン層とは異なる世代にリーチする効果もあるでしょう。しかしながら、レコード会社やその関連企業の契約を逸脱しているのではないか?と思うような動きが、現代の日本では多く見られるのです。アーティストが勝手にYouTubeでライブを提供する、アマゾンを始め、多数のオンラインサイトで売られているコンテンツが、YouTubeのオフィシャルサイトで無料で多数配信されてしまっている。オンラインサイトを運営する企業は、多くのケースで、コンテンツとして売らせてもらうために、非常に高い契約金を払ったケースがあると思うのです。それをYouTubeでは無料で不特定多数に届けてしまう。音楽業界の関係者は、よくこれに対して怒りをぶつけないな、と私は思ったものです。しかし、それは「自粛」「おうち時間」「ファン・ファースト」「アーティスト・ファースト」という印籠で、タブーとされてしまっているのかもしれません。契約が重視されていない日本特有の動きかと思います。ただ、考えて欲しいのです。ファンにとっては一見「無料」で「善良」に見えますが、YouTube/Googleにとっては、笑いが止まらないくらい、高い広告収入やそれに繋がるビジネスメリットがあります。それを仕掛けたアーティストや所属事務所には、このことを忘れずに、と強く言いたい。それによって、しっかり金銭払った会社の課金契約やサービスはないがしろにされ、YouTubeだけが札束数えながら、横目で、「おうち時間を楽しんで」と半笑いで言い続けるように見えて仕方ありません。このままでは、間違いなく、音楽業界は滅亡し、コンテンツの価値も下がります。つまり、最終的にはアーティストや所属事務所にとっても、音楽で得る収入がチープになってしまうわけです。

このまま無料じゃいけない、ファンは喜ぶけど、そのうち飽きる。音楽関係者もアーティストも気づいていると思うのです。YouTube以外、誰の得にもならない…と思いつつ、上記のような「印籠」の前に、声をあげられる業界関係者は数が限られているでしょう。更に、業界に影響力を持ち、音楽は無料じゃなくて、ちゃんとお金埋めるように戻そうぜ!と叫べるアーティストはもっと少ないはずです。…そんな中、先週大きな発表がありました。

42年目のザンオールスターズが、無観客で横浜アリーナでの公演を実施し、それをファンクラブやU-NEXTを含め、複数の配信サイトでライブさせるというもの!これは、素晴らしい!何といっても、迫力に欠けるZoomライブでもない、なんとなく狭苦しいスタジオライブでもない。横浜アリーナ!!!つまり、サザンオールスターズメンバーが出演するだけではなく、照明や舞台セットまでも含めて組むつもりでしょう。そこに従事する人々が、どれだけ救われるかという事を考えると、熱い思いが自分にも込み上げてきます。

音楽業界はいつまでも夢がある業界であって欲しい。だからこそ、収入がきちんと入る、ビジネスが回るシステムを拡大して欲しいと切に願います。CDから配信というようにメディア構成が変わったとしても、更に音楽業界の数字が爆速する業界であって欲しいと願います。今回のように業界に苦難がぶち当たることもあるでしょう。形を変えざるをえない事もあると思います。しかし、そこは常に革新的に対応していって欲しい。その結果、アーティストを、芸術を守ることにも繋がるはずです。安易な安い方式に流れるのは心から反対したい。我々の毎日の生活の中に、豊かな思いを育んでくれる音楽があります。しかし、それは大型なビジネス構造から生まれる。だから、そのアーティストを全く知らない人にも、世界の裏側にいる人にも、時間を超えてでも価値が届くのです。それでこそ、人が思い、憧れるエンターテイメントであるはずです。私もチケット購入しました。

音楽業界!がんばれ!!

「サザンオールスターズ 特別ライブ 2020 「Keep Smilin' 〜皆さん、ありがとうございます!!〜」」をU-NEXTで視聴

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