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人口600人の島根県奥出雲町の集落で、面白いまちをみんなでつくる。ー文化と人の魅力とは
島根県。ずっと東京近辺に住んでいる私にとっては、なかなか馴染みのない土地でした。
しかし、あるイベントで出会った石亀ゴローさんの話を聞いて、彼の活動に強く興味を持ちました。
ゴローさんは、現在島根県奥出雲町三沢地区で地域おこし協力隊として活動しています。約2年間にわたり、コワーキングスペース「みらいと奥出雲」の運営や起業家支援、そして空き家を活用したゲストハウス「SLOWHOUSE@okuizumo」の立ち上げなど、多岐にわたる取り組みを行っています。
今回は、実際に島根に訪れて彼の活動を紹介していただく貴重な機会をいただきました。記事では、彼の活動を通して島根県奥出雲の魅力をお届けします。
1000年もの歴史と文化が続くまち、島根県奥出雲町
ーーゴローさんが活動されている奥出雲町はどんなところですか?
奥出雲は、島根県の東に位置する中山間地域で人口約1万1000人が暮らしている地域です。さらに島根県は45%の高齢化率の少子高齢化が進んでいて、「過疎発祥の地」と言われるほどです。過疎化の進行に伴い、移動販売や空き家リノベーションといった過疎先進地域としての取り組みがここから生まれているのも特徴です。
また、古くからの神話、製鉄業や食文化などが豊かに残っている土地でもあり、僕はそんなところを魅力に感じています。
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ーーそうなんですね。詳しく教えてください。
例えば、神話。有名なヤマタノオロチをスサノヲノミコトが退治したという神話がこの地には残っており、古代からの伝承が息づいています。
この神話は1300年も前の『古事記』にでてくる神話です。そんな昔から今までゆかりの地が守られ保存されてきたことに感動します。いまでも伝説に出てくるスポットを15以上回ることができます。そもそも、ここまで歴史の長い国って日本くらいですし、かつ街中でこれほど歴史を感じられるのはすごく貴重なことなんだと思います。
ーー日本人としてもっと歴史を勉強してスポットを回ってみたくなりました。他にはどんな魅力がありますか。
「たたら製鉄」を中心とした食文化や生活を、いろんな人にもっと知って欲しいなと思っています。
「たたら製鉄」とは、古代から続く製鉄技術のこと。奥出雲町では日本刀の原料である玉鋼を生産する日刀保たたらが今も稼働している世界唯一の場所なんです。
余談ですが、話題になったドラマ『VIVANT』では、たたら製鉄の一家がモデルの人々がでてきたり、奥出雲がロケ地になっていたりします。歴史を知っていたので、「お!出てきた!」とテンションがあがりました(笑)。
ーー『VIVANT』観ましたよ。面白かったです。そのたたら製鉄がどう食文化や生活に繋がっていくのでしょうか。
まずこのたたら製鉄の材料の砂鉄を採るために山を切り崩すのですが、その山を畑や田んぼに変えることで農地を確保してきました。この農地を活かして、多くの特産品が生産されました。その代表的なものが奥出雲そばと仁多米。
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そばはおいしくて大好きですし、仁田米は「東の魚沼、西の仁多米」と言われるほど評価が高いです。また、農業だけでなく鉄の運搬や農耕などを担った和牛が奥出雲和牛として、2022年に開催された第12回全国和牛能力共進会で肉質日本一の和牛として評価されました。
ーーたたら製鉄での無駄や副産物を活かして、新しい産業が生まれてきたんですね。
そうなんです。これこそまさに究極のサステナブルだなと思っていて。実はたたら製鉄も歴史が古く、約1400年前から行われています。今の人が昔の人から学べることは多いんじゃないかと思いますね。
食生活だけではなく、山を切り崩した時にできた棚田も奥出雲の景観をつくっていて、美しく、つながりを感じてわくわくします。
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「人に惹かれて」。奥出雲町三沢地区でまちをつくる
ーーゴローさんは現在、奥出雲町の三沢地区でご活動されていますね。三沢地区はどんなところでしょうか。
三沢地区は、奥出雲町の9地区の中で最も小さい小学校地区で、人口約600人ほど。この地区には、出雲で権力を持っていた三沢氏のお城があり、中国山地を一望できる場所としても知られています。また、自然豊かで四季折々の風景が楽しめる地域です。冬は豪雪で苦労するのですが(笑)。
目立つものは特になく、地域のマーケットも数年前に閉店したほどです。しかし、地域を盛り上げるため、いろんな取り組みが行われているのが面白いと思っている場所です。
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ーー自然が綺麗で、まちを歩くだけで清々しい気分になりました。何に惹かれてこの地域で活動すると決めたのですか。
もともと、地域創生に関わりたいと思って、会社を辞めて日本を旅していました。紆余曲折あり、三沢出身のおっちーさん(落合さん)と出会い、奥出雲へ訪れたんです。
そのときに感じたのが、「こんなに小さなまちなのに、チャレンジしている人がたくさんいて面白い」ということでした。
そこから徐々に移住して、地域おこし協力隊として僕もチャレンジをはじめました。
ーー素敵ですね。実際どんな方々がいたのでしょうか。
2018年5月に「みらいと奥出雲」という起業創業支援施設ができたんです。ここは、町内でチャレンジする人を増やすことを目的としていて、その中の取り組みが面白いんです。
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まず一つ目が、「NPO法人ともに」。大きな買い物施設であるJAの経営が難しくなり閉店してしまった後、吉川さんが自ら地域の高齢者の生活を支えるために「NPOともにマーケット&コミュニティスペース」を作りました。
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マーケットに加え、週に2回、火曜と木曜に移動販売を行い、免許を返納したおじいちゃんおばあちゃんのために買い物のサポートをしています。実は僕も移動販売者のスタッフ第一号として、地域を回っていました。
この移動販売は、移住者が顔を覚えてもらえて、深く地域に入っていくきっかけになりました。また、雪が降ると住民は家から出られず陸の孤島になるのですが、この活動によってしっかり物資を行き渡らせることができて社会的な意義があるなと感じています。
もう一つが、「オクリノ不動産」。もともと地域協力隊として活動されていた糸賀さんがつくった、まちで唯一の不動産で空き家活用に力を入れています。その中のひとつとして、事務所兼レンタルスペース兼共有キッチンとして「金吉屋」をつくり、いまでは地域の人々が集まりやすい場所になっています。
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金吉屋が面白いのは、友の会を中心に100人以上で場所を作り上げたこと。さらに、チャレンジしたい人がチャレンジしやすいよう、場をひらいたことです。
例えば、夜のバー「金吉屋大作戦」ではお酒を飲みながら本音を語り合い、自分たちでつくりたい場所を構想し、アイディアを日々のプロジェクトに落としています。
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例をあげればもっとあるのですが、このように「自分たちの手で地域をよくしていく」取り組みが自発的に行われているところに三沢地区の魅力を感じたんですよね。
ーーみんなで作り上げるまち、という感じが面白いです。
そうなんですよ。このまちは、不便で小さいからこそ団結しないと生き残れないという感覚があります。なのでみんな協力的で活気が溢れているんです。
ゲストハウスをつくり、地域に訪れてくれる人を増やしたいー地域の協力を得て
ーーゴローさんの現在の活動について教えてください。
いまメインで頑張っているのは、空き家をリノベーションしてつくっているゲストハウス「SLOWHOUSE@okuizumo」の立ち上げです。地域おこし協力隊として2年間過ごす中で、僕はこの地域のために何ができるかなって考えたんです。そんななか、関西から来た学生のインターンの子たちと地域の人が交流する機会があり、涙を流すほど想いをぶつけ合っていたのを目にしました。
これがきっかけで、僕にできることは「関わる人を増やし、出会って交流してもらうこと」だと考えました。目的地になる場所が必要だと思ったんです。だから、ゲストハウスをやろうと決めました。
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2024年8月中旬オープンに向け最後の追い込み中
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ーー素敵な想いですね。ゲストハウスとまちは今どういう関係性ですか。
いろんな人が応援してくださっています。僕としても、たくさん手伝ってもらって金吉屋のようにまちの人に愛着を持ってもらいたいんです。すでに、100人以上関わっていただいて50人以上にリノベを手伝ってもらいました。県外から来てくれる人もいます。
また、地域の人も面白く協力的な人が多いです。
例えば、三沢神社の宮司さんである陶山さんは「日本一ファンキーな宮司さん」だと思っていて。ビートルズの曲を流しながら、趣味でつくった黄色いピザ釜でピザを焼くんですよ(笑)。ゲストハウスの廃材を持っていってピザを焼くのに使ってくれます。軽トラ3回分くらい一気に持っていってくれました。小学校の子供達にふるまったりして、交流も盛んです。
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また、地域の大工さんである、ともくんこと藤原さんにも、「やるからにはちゃんとやろう」ということでボランティアで土日手伝ってもらっている。ここまで大掛かりでちゃんと工事するとは思ってはいなかったのですが(笑)。
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小さい集落だからこそ、誰が何をしているかみえやすく、みんなに興味をもってもらえていています。宮大工さんも柴犬の散歩をしながらアドバイスしてくれたり、コミュニケーションが生まれていて、温かいなと思います。
都会の若者こそ、遊びにきてほしい。
ーー今後の展望を教えてください。
地域の人は、「三沢だからやるんだよ、この地域のためなら」と言って協力してくれるんです。本当に周りに助けられている。前はいろんな人に助けてもらえばもらうほど、プレッシャーを感じていたのですが、今はちゃんと受け取って、そんな愛に溢れた素敵な人たちと一緒にまちをつくっていきたいと本気で思っています。
だから、ゲストハウスの他にも自治体と一緒にいろんな取り組みを仕込んでいます。オランダの学生が遊びにくるなど先進的な取り組みもあり、もっと面白くなっていきそうですよ。また、過疎の地域だからこそできる体験をどうやって体感してもらえるかも、常に考えています。
まずは、ゲストハウスを完成させ、たくさんの人に来てもらいたいですね。
ーー最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
僕は東京生まれで、ずっと関東で育ちました。会社に就職して、旅をするようになって、地方で面白い活動をしている人たちを知りました。みんな、目がきらきらしているんです。
そして価値観が広がって、僕もこうやって自分の挑戦ができている。違う地域に飛び込んでみることの価値を感じています。
都会の人こそ、三沢のような場所で豊かな人間模様に触れて欲しいと考えています。きっと人生に大きな気づきを与えてくれると思います。
だから、みなさん、奥出雲まで遊びに来てください。僕が案内します!
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ーーゴローさん、ありがとうございました。素敵な活動、応援しています。また遊びに行きますね!
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