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夫を映画仲間にするために、2年で勧めた80本 (41~80)
1~40はこちら。
41 キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
両親の離婚にショックを受けて家出した16歳のフランク・アバグネイル・Jr。天性のハッタリと知能で、パイロット、医師、弁護士に身分を偽装し、FBIに追われる身に。
彼が詐欺を繰り返す理由は、"成功者のアバグネイル家"を再現すれば、ママが戻ってくると思い込んでいるから。
嘘みたいな実話の映画。メインのストーリーはもちろん、映像で語るシーンが多くて楽しい。例えば、FBIに捕まったフランクが飛行機で輸送されるとき。医師を詐称していたときの聴診器を手で弄びながら、司法試験を突破した方法をはぐらかす。なのに、テーブルの上にはミルク多めのカフェオレと、散乱するお菓子の包み紙。FBIに真顔で「エクレア食べないの?半分くれよ」
なんてアンバランスで魅力的な主人公なんだろう。尋問の答え(司法試験を突破した方法)は映画のラスト6分でさらっと明かされる。
42 ドクタードリトル
エディ・マーフィのコメディ。動物と会話できるようになっちゃった医者のお話。
子どもの頃、大笑いしながら観た。NHK教育番組の動物さんたちは可愛くて優しくて仲良しなのに、アメリカンコメディの動物さんは、口が悪くて悪態と下ネタばかり。うつ病のトラ、酒浸りのサル、やかましくて車酔いの激しい犬……。
ロバート・ダウニー・Jrがドリトル先生を演じるリメイク版が2020年に公開された。早く見なきゃ。
43 スラムドッグ$ミリオネア
スラム街の負け犬(スラムドッグ)がクイズ番組で大金持ちになるチャンスを掴む。主人公ジャマールはスラム生まれ。両親を失い、ゴミ売りや物乞いで生きてきた無学の青年……のはずなのに、番組が用意した難問に次々正解していく。
ジャマールにとって良くも悪くも切り離せない存在、兄のサリーム。
生き抜くためならどんなに汚い手でも使うスラムの少年であり、弟のためなら命の危険を省みない兄であり、部屋で一人神に祈るマフィアの下っ端。
ストーリーが一気に集約されるラストシーンでは、主役の2人よりサリームに心を持って行かれる。
44 セッション
特別な才能を開花させるためなら、恐怖も暴力も許されるか?見終わったあと、延々と考えてしまう。
J・K・シモンズが演じる鬼教師が怖すぎて、画面越しでも心臓がきゅってなる。そしてラストの『Caravan』の演奏シーンは圧巻。サントラ聞いていると、音楽に合わせて映画のシーンがありありと浮かんでくる。
45 プラダを着た悪魔
鬼教師のあとは鬼上司。おしゃれに興味がなく、雑誌RUNWAYを冷めた目で見ていたアンディが、ファッション業界で「やってやる!」と覚悟を決め大変身するシーンが好き。
アンディを大変身させるナイジェルを演じるのはスタンリー・トゥッチ。『バーレスク』でクリスティーナ・アギレラにショートカットを提案するのも彼。ハイセンスな仕事人であり、人の美しさを見抜く愛ある人。
46 マイ・インターン
セットで『マイ・インターン』。この映画の最高なところは、ジュールズの悩みを散々聞いたベンが、『雨に唄えば』の「You were meant for me」を見ながら独り涙を流すシーンが入っているところ。
清潔感のある紳士で、ちょっと教えればメールも覚える優しいおじいちゃん。あまりに理想的な70歳のシニア・インターン。
彼の人生は劇中でほとんど描かれない。唯一と言っていいのは『雨に唄えば』を見る前に、亡くなった奥さんの人柄を話すシーン。
『雨に唄えば』の映画が公開されたとき、ベンは7歳だ。
47 チョコレートドーナツ
ゲイのカップルである弁護士のポールとダンサーのルディは、育児放棄されたダウン症の男の子マルコを保護する。
3人は愛情のある家庭を築くけれど、偏見と社会制度に引き裂かれてしまう。タイトルの『チョコレートドーナツ』はマルコの好物。
マルコの好物がチョコレートドーナツだと知っていたのは、ポールとルディだけ。「ご飯にチョコレートドーナツはダメ」と教えてくれた、たった2人の家族。
48 アニー
いつか本当の両親が迎えに来てくれると信じて生きる、明るい女の子アニー。車に轢かれそうになったところを、大富豪のウォーバックスに助けられる。
ニューヨーク市長選を控えたウォーバックスは、自分の選挙活動のため(つまりいい人アピールのため)アニーを自分の家に住まわせる。
アニーといえば『Tomorrow』。自分の家族を想像しながら、リュックをぴょんぴょん弾ませて『Tomorrow! Tomorrow! I love ya Tomorrow!』と歌うアニーがすごく愛しい。
2015年のリメイク版。キャメロン・ディアスの演じるミス・ハニガンがハマってる。
49 モンスター上司
大好きなコメディ映画。パワハラ上司(朝6時に出社していないと朝からスコッチを飲ませてくる)、セクハラ上司(婚約中なのを知って職場で迫ってくる)、バカハラ上司(親から会社を引き継いでやりたい放題のヤク中)に悩まされる男3人が、お互いの上司の殺害計画を立てる話。
上司3人のキャスティングが最高で、セクハラ歯科医を演じるのはなんとジェニファー・アニストン(ブラピの元妻)。「美女に迫られるなんていいじゃん!」と言えないくらいの強引&下品さに笑ってしまう。
『モンスター上司 2』では、主役の3人が上司から解放されるため起業。おなじみのM・F・ジョーンズやハーケンも出てくる。上司ってそういうことよね〜と皮肉が効いたラストシーンだった。
50 チャーリーズエンジェル
セクシーで、強くて、可愛いスパイ3人組。見終わったあと絶対に「3人の中で誰が一番好き?」って盛り上がる映画。
小学生の男子みたいなダサいパンツで踊るキャメロン・ディアス。星柄のつなぎのチャックをお腹まで開けて時間稼ぎをするドリュー・バリモア。ブルーベリーマフィンを手作りしながら爆弾処理のコツを話すルーシー・リュー。
そんなアホな!って笑っちゃう展開は何度見ても飽きないし、3人揃った「「「Good morning, Charlie!」」」は定期的に聞きたくなる。
51 ハングオーバー
さらに続けてコメディ!『ハングオーバー!』から『ハングオーバー!!!』の3部作。
話の大筋はシリーズでだいたい共通。親友3人+アラン(狼軍団)の誰かの結婚式の前日、アランのせいで全員が泥酔。みんなが二日酔いの中で目を覚ますと大惨事が広がっており……。泥酔の中やらかしたトラブルを解決しながら、結婚式を目指す。
このシリーズに欠かせないド派手なトラブルメーカー、チャウ様ことケン・チョン。全裸で車のトランクから飛び出るなどかなりクレイジーな役をこなしているけれど、実は元医師。自分のコメディライブ中に倒れたお客さんの救命措置をしたこともある。
52 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ大人帝国
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』と並んでクレヨンしんちゃん映画の大名作。
ケンとチャコが、昭和を完全再現した世界「夕日町銀座商店街」を歩く名シーン。『白い色は恋人の色』が流れると、知らない時代の話なのにノスタルジーが直接心に流れ込んできて苦しくなってしまう。アニメーションの神作画シーンとしても愛されてる。
53 ミッドナイト・イン・パリ
ノスタルジー繋がり。1920年代の文学や芸術を愛するあまり、周りからちょっと浮いてる男ギル。憧れのパリに滞在中、謎の車が迎えに来て、1920年代にトリップしてしまう。
フィツジェラルドや妻ゼルダ、ヘミングウェイ、ピカソ、ダリ。敬愛して止まない芸術家たちが同じ時代、同じ場所に生きて意見を交わしていたことを自分の目で確認し、ギルは興奮が止まらない。
歴史にロマンを感じる人にとって、夢のような映画。芸術家たちのキャスティングも完璧。
54 ミッドナイトスワン
同じ「ミッドナイト」だけど、全く違うタイプの映画。草彅剛の映画が見たくて選んだ。
新宿のニューハーフクラブで働くトランスジェンダーの凪沙の元に、育児放棄された姪の一果が預けられる。
初めは一果を邪険に扱っていた凪沙が、一果のためにどんな犠牲も厭わない"母"に変わっていく。ストーリーとしては『チョコレートドーナツ』に似ているけど、凪沙の人物像としては『レミゼラブル』のファンティーヌ(演:アン・ハサウェイ)に近い。
人間の才能は、誰かに守ってもらわなきゃ消えてしまう。凪沙が命懸けで守った一果の才能。バレエシーンが何度かあるけど、海辺で凪沙だけのために踊るところが綺麗。
55 ボヘミアン・ラプソディー
SONYのサウンドバーを頂いて、届いた週にすぐ見た。伝説のバンドQueenのバンド結成からLive Aidまでを描く。
フレディ・マーキュリーを演じるのはラミ・マレック。目元が特徴的な俳優で、好奇心と動揺が混じったような視線の揺れが天才フレディ像にピッタリ。
Queenといえば、メンバー全員が世界的ヒット曲を作ってる奇跡のバンド。それぞれのヒット曲がちゃんと映画内で網羅されてるのが最高!
56 デトロイト・メタル・シティ
バンドつながりというわけでもないのだけど、『デトロイト・メタル・シティ』。
ポップミュージシャンになりたくて上京した心優しい根岸君だが、彼にあったのはデスメタルの才能だった。
根岸君は、本来の自分の姿とヨハネ・クラウザーII世の姿を、なんやかんや器用に使い分けてると思う。遊園地のトイレでタンバリン鳴らしながら踊るシーンが好き。
57 シャーロック・ホームズ
シャーロック・ホームズは何度も映画化ドラマ化されてるけど、一番好評なのはこれじゃないかしら。
ロバート・ダウニー・Jrがホームズ、ジュード・ロウがワトソン君を演じる。結構破壊的な映画で、序盤から闘技場でボクシングをするホームズが見れる。
この映画は吹き替えもすごく良い。ホームズの芝居がかった大仰な喋り方がぴったり。
58 グリーンブック
1962年のアメリカ。黒人の天才ピアニストシャーリーは、黒人差別が激しい南部でツアーをするため、荒っぽいイタリア人トニーを用心棒に雇う。
差別的な扱いを受けても誇りと品格を失わないシャーリーと、腕っ節が強く世渡りに長けたトニー。何もかも真逆な2人は、喧嘩しつつも最強の二人三脚になっていく。
用心棒のトニーがシャーリーを助けるシーンが多いけれど、トニーが妻への手紙を書くときは、シャーリーが協力してくれる。芸術家のシャーリーは、女性が喜ぶような知的でロマンチックな文章を考えた。
トニーの妻ドロレスは大感動して、近所の奥様たちの前で手紙を朗読。みんなでうっとりしながら聞き入る。黒人であること、天才であることなどあらゆる意味で近寄り難かったシャーリーが、本来人に囲まれて愛されるべき人だと示す少し切ないシーン。
59 エール!
高校生ポーラ・ベリエの家族は、ポーラ以外全員耳が聞こえない。ポーラは父、母、弟の手話通訳を一手に引き受けていた。
高校の音楽教師はポーラに歌手の才能を見出し、パリの音楽学校に挑戦することを勧める。
家族一丸となって生活してきたベリエ家にとって、家族で唯一耳の聞こえるポーラが家を出ることは悲劇。よりによって、自分達が一生理解できない"音楽"のために。
びっくりするほど性にオープンだったり、感動シーンがあざとくないのがフランス映画っぽい。
60 ハミングバード・プロジェクト
最速の株取引を実現するため、カンザスからニューヨークまで1,600km、完璧に一直線のケーブルを引くプロジェクト。0.001秒の短縮のため人生をかけた2人の男の話。
ライバルになるのは、2人が元々働いていた会社の上司エヴァ。抜群のスタイルに銀髪の強烈キャラはまるでアニメのラスボスのよう。
61 He's Just Not That into You
一番好きな恋愛映画。原題は『He's Just Not That into You(彼はあなたに興味がない)』なのに、邦題はなぜか逆の『そんな彼なら捨てちゃえば?』。邦題には全く納得できないけど映画は面白い。
主人公ジジは、「男の子が意地悪するのは、あなたが好きだからよ」と教わった少女時代から男性のサインを読み間違えっぱなし。
暴走するジジを見かねたバーテンのアレックスは、男の本音を教える。
「男が君にどうでもいい素振りをしたら、本当にどうでもいいんだ。例外はない」
女性が「それそれ!」って頭抱えるシーンと、男性が「それそれ!」ってニヤニヤしちゃうシーンが交互にくるので性別選ばず楽しい映画。
62 レディ・プレーヤー 1
2018年を起点に27年後を描いているので、2045年の世界。人類は荒廃した現実世界よりも、VRワールド「オアシス」に夢中。
瞬きを忘れるようなCG・VFXと「うおぉ!」と前のめってしまう熱い展開。何よりAKIRA、ガンダム、シャイニングなど一定層に深く刺さるクロスオーバーが魅力。
63 冷静と情熱のあいだ
江國香織と辻仁成の小説『冷静と情熱のあいだ』の映画版。
ストーリーは大道ラブストーリー。香港からの留学生で、家庭にも学校にも居場所を見つけられないあおい。レコードショップで啖呵を切る彼女に一目惚れした順正。入り込む隙がないほどぴったりな2人だが、ある事件がきっかけで別れてしまう。
10年後、フィレンツェの工房で絵画の修復をする順正と、ミラノで婚約者と不自由なく暮らすあおいが再び巡り合う。
サウンドにはエンヤの曲が使われている。これが本当にピッタリで、映画と音楽が溶け合うよう。この映画を見た後、エンヤの曲をイヤホンから流せば、アパートから工房に通う順正の気分。石畳の道をガタガタと進みながらすれ違うレンガ造りの家。その間から見える真っ青な空。窓辺に植えられた花。花の都フィレンツェにトリップ。
64 女神の見えざる手
ヨーロッパのラブストーリーから一気に方向転換して、銃社会アメリカのロビー活動家エリザベスの話。
女性に銃を広めようとする銃擁護派団体から、ロビー活動の依頼を受けたエリザベス。依頼を笑い飛ばし、部下を引き連れ「銃規制派」の小さな会社に移籍。まさに「見えざる手」で世論を導くかのように、形勢を逆転させていく。
ロビー活動とは、政策に影響を与えることを目的に行う政治活動のこと。政治も社会も、綺麗事じゃ動かない。正気を保ったまま、どこまで毒になれるか?
65 テルマエ・ロマエ
古代ローマのテルマエ設計技師ルシウス(阿部寛)が、日本の銭湯にタイムスリップする時代コメディ。
ルシウスは平たい顔族(日本人)が持つお風呂技術を古代ローマに持ち帰り、テルマエ技師として大出世。ハドリアヌス帝の信頼を得る。
「自分は平たい顔族の真似をしているだけだ」と世間の評価を素直に喜べないルシウスだけど、彼が展開するテルマエは絶妙にローマナイズドされており平たい顔族(私たち)としては「そうきたか!」と見入ってしまう。
皇帝ハドリアヌス帝は、原作者ヤマザキマリが惹かれてやまない男性の一人。著書『男子観察録』では、ハドリアヌス帝を、"外部の干渉を気にせず自分のやりたいことをコツコツ行った人物"と紹介し、彼の手がけた別荘を歩きながらこんな感想を抱いている。
たとえ時間によって風化した遺跡の状態しか残っていなくても、この別荘を歩いていると、そんな彼が自分のために注いだ一途な情熱が伝わってくるようであり、それこそ私が思うところの、自分という小宇宙に身を委ねた、素直な「男らしさ」の軌跡を感じさせられる。
66 レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語
不幸な火事で身寄りがなくなってしまった3人姉弟。長女のヴァイオレットは発明の天才で、どんなガラクタからでも必要なものを見つけて役立つものを作り出す。弟のクラウスは大の読書家。読んだ本は全て覚えている。末っ子のサニーは丈夫な歯を持っていて、噛み付くことが大好きな赤ちゃん。
3人を引き取ったオラフ伯爵は、実は子ども達の遺産が目当て。あの手この手で3人を始末しようとする。
この映画のエミリー・ブラウニング(ヴァイオレット役)、この世の人間とは思えないくらい可愛い。衣装も相まって、理想を詰め込んだお人形が喋ってるみたい。
67 好きにならずにいられない
美形3姉弟の次は、43歳童貞実家暮らしの大男フーシ。氷の国アイスランドで、母親と2人暮らし。親切だけど内気すぎるフーシに、母親がダンス教室のクーポンをプレゼントする。
物語の序盤では、フーシが教室で出会った気さくな女性シェヴンにぎこちないアタックをする。お気に入りのレストランに連れて行ったり、ラジオのDJにシェヴンのための曲を頼んだり。「いいじゃん!」と思ったら、いきなりエジプト旅行を提案して断られちゃう。フーシの不慣れな愛情表現と、それを広い心で受け取るシェヴンが可愛らしい。
けれど中盤からは一変。シェヴンが荒れた部屋で引きこもり、理由を聞いても泣くばかり。ここから、恋愛経験0の優しい大男と、重い鬱で生活を失った女性の恋愛が始まる。
自分と釣り合う人を愛するのって、難しいことだ。
人のモテない要素が荷物だとすると、クラッチバッグしか持っていない人間から、クーラーボックスを両肩にかけたうえ背中バックパック背負ってる人間まで存在する。
クラッチバッグ持った男がパーティバッグ持った女に「君の荷物を持ってあげるよ」で始まる恋愛がある。背中が曲がるほどの大荷物を持った男が、キャリーケースで階段を登れず途方に暮れてる女に「君の荷物を持ってあげるよ」とはじまる恋愛もある。この映画は後者。
「こんなに面倒なら一人の方がマシ」とは絶対に言わないフーシ。大人になるほど、この一言を言わないのは難しい。
68 ジゴロ・イン・ニューヨーク
廃業に追い込まれた本屋の店主マレーが、花屋で働く友人フィオラを巻き込み男娼ビジネスを始める。イケメンでも若くもないから自分には無理だと言うフィオラに、マレーはこう言い返す。
「君は違うよ。何て言うかその…男の中の男というか、汚れることを恐れない。手を汚して植物をイジってる。電線や水道管、下水管、便器を扱う仕事もする。汚い仕事を恐れない。前向きに汚らしいんだ」
フィオラは「褒められて嬉しい」と皮肉っぽく返すけど、マレーの洞察力はすごい。女の弱点を暴かれた気分。
69 ザ・シンプソンズ MOVIE
1989年に放送開始された、アメリカ史上最長寿アニメ。実は2020年まで日本の地上波で放送されたことがなかった。にもかかわらず超有名な黄色い彼ら。
アホっぽくて、風刺と皮肉があって、でもここぞというときダイナミックなアニメーションで驚かせてくる。
軽めに1本映画見てから寝たいなって日にピッタリ。
70 南極料理人
愛嬌のあるおじさんたち、日常、美味しいご飯。邦画の魅力よくばりセット!な映画。堺雅人演じる西村君は、海上保安庁から出向している調理担当隊員。毎日、隊員たちのために料理を作る。
この映画の名場面といえば、おにぎりと豚汁のシーン。どこまでも広がる雪と、照りつける太陽の下、作業中の隊員に向けて、メガホンでお昼のアナウンスをする。
皆様、お昼になりました。 おいしいおいしいおにぎりと、あつあつの豚汁ができました。 おにぎりの具と致しましては、シャケ、牛大和煮、タラコなど。 本日の当たり目と致しまして、豪華北海道産イクラをご用意致しました。
「南極でおにぎりと豚汁食べたい!」と「南極でおにぎりと豚汁作ってあげたい!」の両方が込み上げてくる。オチも邦画ぽくて好き。
71 座頭市
一番好きな邦画。サブスクで観られないからTSUTAYAにDVD借りに行った。こんなに痺れる脚本を考えて自分が主演もやっちゃうなんてずるい。
浅野忠信が演じる浪人と居酒屋での抜刀術、芸者姉妹を逃すときの殺陣、合間に入るテンポの良い雨音や畑仕事のミュージカル的な要素、なんと言っても最後のどんでん返しと下駄タップ。
何度見てもかっこよさが消化しきれず体がビリビリする。
72 スマグラー
『闇金ウシジマくん』の作者真鍋昌平の初連載漫画『SMUGGLER』の映画化。役者志望だったがパッとせず、人に流されるまま借金を負ってしまった砧(妻夫木)は、金貸しに運送屋(スマグラー)の仕事を紹介される。運ぶ荷物は中国マフィアの暗殺者「背骨」。組長を殺したこの男を、生きたままヤクザの元に輸送する任務を負う。
私たちって修羅場を避けて生きる一方で、修羅場から這い上がってきた人間にどうしようもなく惹かれる。
砧が河島に拷問されるシーンはかなり暴力的だから苦手な人は注意。(でも拷問の直後が胸熱な展開なのでいつも薄目で見てる)
73 マイケル・ムーアの世界侵略のススメ
マイケル・ムーア監督のドキュメンタリーで最も幸せな気持ちになる作品。アメリカ軍が世界を侵略しても、国民の暮らしは全然良くならない。そこで監督は、上手くいっている国の制度を"侵略"しに出発する。
丸2ヶ月の有給休暇があるイタリア、給食がフルコースなフランス、業務時間外に上司が連絡するのは違法なドイツ、宿題がなく公立学校のみなのに学力が世界一なフィンランド。
私たちって、もっともっと幸せになる余地あるじゃんと思える映画。
74 ドリーム
コンピュータが実用化される前から、アメリカとソ連の宇宙開発競争は始まっていた。紙とペンで宇宙船の軌道を計算をしていたのは、名もなき計算係。
人種差別と女性差別が色濃い1960年代のアメリカ。数学の天才(なのに女性だから会議に参加させてもらえない)キャサリン、エンジニア志望(エンジニアになるには白人専用学校のトレーニングプログラムへの参加が必須)のメアリー、黒人女性の計算チームをまとめる(実質管理職の業務をこなしてるけれど黒人女性は肩書きがもらえない)ドロシーは、日々不当な扱いを受けながらも宇宙開発に尽くす。
理不尽な仕打ちを理性で飲み込み、知性と勇気と対話で社会を変えていくキャサリンたち。こういうしなやかさと強さをレジリエンスって呼ぶんだな。
原題は『Hidden Figures』。「知られざる人物」「隠された数字」の掛詞。
75 世界にひとつのプレイブック
妻の浮気現場に遭遇したため躁鬱病になり、やっと精神病院から退院したパットと、夫を失って性依存症になり、社員全員と寝てクビになったティファニー。
心が壊れた大人2人が、プロのダンスコンテストに出場するお話。ハタから見たら奇行だらけの彼らは、いつだって超真剣。自分のキャパを超えた不幸を乗り越えようともがく。
ティファニーを演じるのはジェニファー・ローレンス。呪術廻戦で虎杖が好きな女優として名前を挙げていた。なんてセンスある高校生。
76 容疑者Xの献身
ドラマ『ガリレオ』の劇場版。旧江戸川から男の遺体が引き上げられる。男の元妻・花岡靖子とその娘に疑いの目が向けられるが、2人には完璧なアリバイが。
警察から相談された天才物理学者・湯川(福山雅治)は、花岡靖子のアパートの隣に学生時代の友人で数学者の石神が住んでいることを知る……。
石神が、花岡靖子との関係と、学生時代に夢中になっていた『四角問題』を重ねて言う「隣同士が同じ色になってはならない」に胸が苦しくなる。
77 天才スピヴェット
『アメリ』の監督が描く、10歳の天才科学者スピヴェットの家出劇。彼の家族は、カウボーイの生き方を貫く父、昆虫学者の母、アイドルになりたい姉、やんちゃで勇敢な双子の弟レイトン。
ある事故でレイトンが亡くなり、家族は誰もレイトンの話をしなくなった。
スピヴェットの心には、吐き出し口を失った感情が動き回る。レイトンの死への責任、"父のお気に入りじゃない方"の自分が生き残ってしまった不安、科学的好奇心を抑えつける学校の息苦しさ。
ある日、スピヴェットが開発した永久機関がスミソニアンのベアード賞を受賞。受賞スピーチを行うため、一人でアメリカ横断の旅に出る。
家庭という閉鎖された空間では、父と母はなぜ結婚したのかわからないほど趣味の違う人間だし、スピヴェットとレイトンは父と母それぞれの分身で双子なのに真逆。姉と母は"理想の女性像"が真反対。
だけど、一人旅をするスピヴェットはちゃんと家族全員にそっくり。
昆虫学者の母、クレア博士を演じているのは私の一番好きな女優ヘレナ・ボナム=カーター。
78 RRR
![](https://assets.st-note.com/img/1679727211206-wO97Es7wMH.jpg?width=800)
3時間座りっぱなしなのに、血行が良くなって12月に汗かいた。
普段は一度見たことがある映画を薦めるのだけど、『RRR』は絶対面白いから映画館に行こう!と劇場鑑賞。
序盤、ラーマが数千人の群衆と戦いながらたった一人の男を逮捕するシーンと、ビームが生身で虎を捕まえるシーンで大当たりだと確信。
インドの、内から噴き出すようなエネルギーと情熱!
言葉を尽くしてレビューしたい気持ちと、「すっごく面白かったのー!!!」と叫びたい気持ちの両方のゲージがMAX。
79 ジョーズ
一種の動物で映画ジャンルを築き上げてるのってサメだけじゃない?
夏の海水浴客で賑わうアメティ島で、観光客の不審な死が相次ぐ。シリアルキラーの可能性も疑われたが、海洋学者フーパーの検死で8mのホオジロザメの仕業だと判明。
巨大なサメを退治するため、ブロディ警察署長、クイント船長、フーパーが海へ。
傲慢な人類が、自分たちは狩られる側だと思い出す恐怖は『ジュラシック・パーク』にもつながる。
特に好きなのが、サメの全長を初めて見たブロディのセリフ。硬直した表情で後退りし、「船が小さすぎる」。怪物の狩場に丸腰で来てしまったと悟り青ざめる。
80 ニュー・シネマ・パラダイス
シチリアの小さな村に住む映画好きの少年トトと技師のおじさんアルフレードの物語。自分の心にある愛情の総量が、この映画を見るたびに増えていくように感じる。
村のみんなの映画の見方が、とにかく自由。通路に座り込んで映画鑑賞する売り子、コメディで大笑いする警備員、赤ちゃんに授乳しながら映画を見るお母さん、セクシーなシーンで客引きする娼婦。夏の野外上映の日には、村の男の子たちが集まってボートの上から鑑賞する。
スクリーンの明かりに照らされたみんなの表情が生き生きしている。
ずっとここに居たくなる、使い古したブランケットのような村。けれどアルフレードはノスタルジーを否定して、トトにこの村から出て人生を切り開くよう言う。
「自分のすることを愛せ。子供のころ映写室を愛したように」
音楽、粋なカメラワーク、映画史上最高と言われるラストシーン。
映画を観ることは、知り得なかった人生を知ること。
自分のことしか考えられなかった頃、向けられていた愛情を知ること。
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