細胞の核はなぜできたのかを知りたくて、イントロンについての論文を読んでみる(その2)
また別の論文を読んでいる。
今読んでるのは、この論文。
前回と同じ、アメリカ国立衛生研究所 (NIH) の Eugene V. Koonin 博士らのグループによる論文だ。
論文のタイトルは、
"A Glimpse of a Putative Pre-Intron Phase of Eukaryotic Evolution"
っていう。
やや意訳すると、
「ゲノムにイントロンが入る前の時期の、真核生物の進化のプロセスを垣間見る」
って感じかな。
遺伝子ファミリーに入っているイントロンを比較して、真核生物という名の生物が成立するかしないか、ぐらいの超初期の真核生物の中で何が起きていたのかを想像しよう、という論文だ。
まず、「遺伝子ファミリー」ってなに?って話だよね。
生き物が持ってる「遺伝子ぜんぶ」ってのを「ゲノム」っていう。
ゲノムを調べると、
「似てるけど、ちょっとずつ違う遺伝子たち」
っていうのが、時々見つかる。
こいつらは、元はひとつの遺伝子だったんだけど、
なにかの拍子に、ふたつに増えちゃって、
その後、それぞれの配列が、少しずつ変わっちゃったんで、
「似てるけど、ちょっと違う遺伝子」になったんだ。
こういう、似た遺伝子が、ひとつの生物のゲノムに5個とか、時には10個とか見つかることもある。
似ている遺伝子の集まりってことで、家族みたいだから、こういう遺伝子のグループを「遺伝子ファミリー」っていう。
遺伝子ファミリーには、
古い遺伝子ファミリー と
最近の遺伝子ファミリー がある。
最近ってのは、
「ほんの数億年前に形成された、比較的新しい遺伝子ファミリー」
ぐらいの感覚だ。
進化にまつわる言葉づかいは、
時間の感覚がおかしいっていうか・・・
スケールが違う。
ここでは、
動物に固有の遺伝子ファミリー とか
植物に固有の遺伝子ファミリー とかを
最近の遺伝子ファミリー、と呼んでる。
つまり、進化の系統樹で、「動物」とか「植物」とかの太い枝が枝分かれした後でできた遺伝子ファミリーを、最近の遺伝子ファミリーと呼んでるんだ。
そして、どの真核生物にもみられるような遺伝子ファミリー、つまり真核生物たちの共通の祖先がすでに持っていたと思われる遺伝子ファミリーを、古い遺伝子ファミリーと呼んでいる。
そしてこれらの、
古い遺伝子ファミリー と
最近の遺伝子ファミリー とで、
イントロンが入ってる位置を比較してみる。
すると・・・
古い遺伝子ファミリーの中で比べると、
それぞれの遺伝子に入ってるイントロンの位置が違う。
最近の遺伝子ファミリーの中で比べると、
どの遺伝子にも、同じ位置にイントロンが入ってる。
重要な解析結果はこれだけだ。
ここから何が分かるか?
バクテリアの中に、別のバクテリアが侵入して寄生したばかりの、ごく初期の真核細胞では、
① ゲノムの中で遺伝子が増えて、遺伝子ファミリーが形成される。
② 遺伝子の中に、イントロンが侵入してくる。
この①と②が、同時に起きていた、っていうんだ。
遺伝子が増えつつ、増えたそれぞれの遺伝子にイントロンが侵入していったんで、それらの遺伝子には、それぞれ違う位置にイントロンが入った。
そして、その後、イントロンの侵入が止んだ・・・
その後で、この共通の祖先から動物や植物が、枝分かれした。
だから、枝分かれした後で遺伝子が増えてできた「最近の遺伝子ファミリー」に属する遺伝子には、みんな同じ位置にイントロンが入ってる、っていうわけだ。
問題は・・・
なぜ、ごく初期に、イントロンの侵入が終息したのか?
ゲノムDNAが、イントロンの侵入から守られるようになったからだろう。
何に守られるようになったのか?
核膜に守られるようになったのだ!
7種類ほどの生物のゲノムの配列情報を解析して、イントロンの位置を比較することで、ここまでのストーリーを描いている。
すばらしい・・・
でも、やっぱり図がないと分かりづらいな・・・
また後で図を描いて、追加したいと思います。
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