DNAのやんわりとした結合のしかたがデジタル情報のコピーを可能にする
DNAってデジタルだ
A, T, G, C の4文字だけで書かれたデジタル情報
DNAはデジタル情報を記録するメディア
DNAみたいな
細くてはかない分子が
デジタル情報のメディアだなんて
なんか信じられない
しかもこのメディアは
自分自身のデジタル情報を
正確にコピーすることもできる
ひとつの細胞が分裂すると
まったく同じ遺伝子を持ったふたつの細胞ができる
つまり細胞分裂の前に
遺伝子というデジタル情報は
一文字も間違えずに
ふたつにコピーされるんだ
そんなすごいことが
なぜできるんだろう?
実はDNAって、こんなふうに
2本の鎖が向き合って、くっついている
必ず
A と T
G と C
が向き合う
AとT、GとCが向き合うのを
こんなふうにカンタンな絵で描くことが多いけど・・・
このカンタンな絵を
ちゃんと構造式で描くと、こんな感じ
こんなふうに、形がぴったり合うので
AはTとしかくっつかない
GはCとしかくっつかない
そしてこの、点々で描いた結合は
水素結合
っていう
構造式の、実線で描かれたところは
共有結合
っていって、しっかりした強い結合
水素結合は、なんとなくくっついてる
やんわりした結合だ
分子の中には、
イオンって言うほどはっきりとは荷電してないけど
なんとなくプラスに荷電してたり
なんとなくマイナスに荷電してるところがある
(δ+:なんとなくプラス)
(δ-:なんとなくマイナス)
プラスの電荷とマイナスの電荷は引かれあうので
δ+ と δ- がやんわりと引かれあって、
やんわりとくっつく
これが水素結合
これってつまり静電気なんだな
プラスチックの下敷きを擦ると静電気が生じて
小さな紙きれが、下敷きにくっつく
でも紙切れは、引っ張ると簡単に取れちゃう
なんともやんわりとした引かれ具合だ
水素結合もこれと同じで
やんわりとした結合
でも、やんわりしてるだけじゃない
水素結合が成り立つには
お互いのプラスとマイナスの位置が
ぴったり合ってないといけない
つまり、相手の分子と形がぴったり合わないと
水素結合は成り立たない
つまりポイントはふたつ
・なんとなくくっついている
・合う相手が決まっている
なんとなくくっついてるだけだから
力をかけて引き離されたりすると
離れちゃう
離れて相手がいなくなったところに
合う相手がやってきて、正確にくっつく
こうして、まったく同じ配列のDNAが
2本に増える!
水素結合の
適度な結合の弱さと
形が合う相手としか結合しない正確さが
みごとに調和している
こうして
デジタル情報のコピーが完成する
これが
細胞がふえる
いのちがふえる
の、いちばん根本にあるしくみだ
こんな奇跡のようなしくみが
ぼくたちの体の中や
生態系のあらゆる場所で
日々働いているなんて信じられない
でもほんとうに
日々、
このしくみが働いている
そうでないと
ぼくたちは生きていけない
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