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DNAのやんわりとした結合のしかたがデジタル情報のコピーを可能にする

DNAってデジタルだ

A, T, G, C の4文字だけで書かれたデジタル情報
DNAはデジタル情報を記録するメディア

DNAみたいな
細くてはかない分子が
デジタル情報のメディアだなんて
なんか信じられない

しかもこのメディアは
自分自身のデジタル情報を
正確にコピーすることもできる

ひとつの細胞が分裂すると
まったく同じ遺伝子を持ったふたつの細胞ができる

つまり細胞分裂の前に
遺伝子というデジタル情報は
一文字も間違えずに
ふたつにコピーされるんだ

そんなすごいことが
なぜできるんだろう?

実はDNAって、こんなふうに
2本の鎖が向き合って、くっついている

001_二本鎖

必ず
 A と T
 G と C
が向き合う

AとT、GとCが向き合うのを
こんなふうにカンタンな絵で描くことが多いけど・・・

002_相補的結合

このカンタンな絵を
ちゃんと構造式で描くと、こんな感じ

008_相補的結合

こんなふうに、形がぴったり合うので
AはTとしかくっつかない
GはCとしかくっつかない

そしてこの、点々で描いた結合は
 水素結合
っていう

009_相補的結合_水素結合

構造式の、実線で描かれたところは
 共有結合
っていって、しっかりした強い結合

水素結合は、なんとなくくっついてる
やんわりした結合だ

分子の中には、
イオンって言うほどはっきりとは荷電してないけど
 なんとなくプラスに荷電してたり
 なんとなくマイナスに荷電してるところがある

011_水素結合

(δ+:なんとなくプラス)
(δ-:なんとなくマイナス)

プラスの電荷とマイナスの電荷は引かれあうので
δ+ と δ- がやんわりと引かれあって、
やんわりとくっつく

これが水素結合

これってつまり静電気なんだな

プラスチックの下敷きを擦ると静電気が生じて
小さな紙きれが、下敷きにくっつく
でも紙切れは、引っ張ると簡単に取れちゃう
なんともやんわりとした引かれ具合だ

水素結合もこれと同じで
やんわりとした結合

でも、やんわりしてるだけじゃない

水素結合が成り立つには
お互いのプラスとマイナスの位置が
ぴったり合ってないといけない

つまり、相手の分子と形がぴったり合わないと
水素結合は成り立たない

009_相補的結合_水素結合

つまりポイントはふたつ
 ・なんとなくくっついている
 ・合う相手が決まっている

なんとなくくっついてるだけだから
力をかけて引き離されたりすると
離れちゃう

011_DNA_変性

離れて相手がいなくなったところに
合う相手がやってきて、正確にくっつく

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こうして、まったく同じ配列のDNAが
2本に増える!

画像9

水素結合の
 適度な結合の弱さと
 形が合う相手としか結合しない正確さが
みごとに調和している

こうして
デジタル情報のコピーが完成する

これが
 細胞がふえる
 いのちがふえる
の、いちばん根本にあるしくみだ

こんな奇跡のようなしくみが
ぼくたちの体の中や
生態系のあらゆる場所で
日々働いているなんて信じられない

でもほんとうに
日々、
このしくみが働いている

そうでないと
ぼくたちは生きていけない

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