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「まだ詩人が一目みれば詩人だと弁別できた時代の名残りが、ひらがなの配置や真中の点あたりに漂っている」

 「真に迫る人物評」なんていうものは、「優しさだけでは書けやしない!」と思い知らされた一冊でした。しかし、優しさだけでは書けないとはいえ、その根底にはまずもって相手への愛情があり、だからこそ「書きたい」という想いが生じ、そして「見る」という行為がはじまります。

 いかに好きであっても親しくとも、ときに冷徹だと感じられるくらいに見続けることができるかどうか。「観察」し続けることができるかどうか。それが、人物評論の要(かなめ)なんだということが、文章の端々から感じられました。

 「見る」ことと「書く」こと。このシンプルながらに徹するとなると難しい二つの事柄を貫き通すことで、はじめて真に迫ることができるのかもしれません。

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