サックスのメンテナンス

白い壁に緑のドア。
控えめな看板には
トランペットの絵。
「江古田管楽器
修理工房」と書いてある。

アルトサックスを背負い、
ドアを少しずつ開けると
カウベルがカランと鳴る。
色褪せた大きなチューバが
何台も修理を待っている。

<プロのための店かな?>
中の扉から眼鏡をかけた
落ち着いた人が出てくる。
「調整して欲しいんです」
おずおずと申し出た。

「拝見させてください」
サックスを手に取ると
内視鏡のような管の先に
灯りのついたものを
楽器の中に入れていく。

「綺麗に使われてますね。
でも少し黴があります。
それとタンポも一つは
交換しなきゃならないかな」
独り言のようにつぶやく。

調整という段階ではなく、
分解掃除が必要らしい。
「一泊は必要ですね。
管楽器はとても繊細。
年に一回は調整したいです」

丁寧に扱ってきたけど、
購入して3年が経っている。
もっと早く見てもらうんだった。
「少しお金がかかるけど、
凄く吹きやすくなりますよ」

秋山さんは笑顔でそう言った。
楽器が好きで愛情があるよう。
「山形で高校時代
ブラスバンドで吹いてました。
その後修理の仕事に就いたんです」

おそらく20年近い
キャリアがあるのだろう。
自信が表情に表れている。
いい人に出会ったと思った。
熟練の職人が好きなのだ。

僕のアルトサックスくん。
これまでメンテしなくて
ごめんなさい。でも、
気持ちよく綺麗になって
いい音、出してくれるよね。