秘剣「残月」

老いた小鹿七兵衛は
果たし合いに応じなければ
ならなくなった。
相手は若い剣客、鵜飼半十郎。
もはや勝ち目はない。
命を落とすと思われた。

そのとき師匠が残した秘剣、
「残月」を思い出したのだ。
相手が出てくるのを待ち、
身を切らせて骨を切る、
きわどい一撃の剣である。
極意は歌にしたためられている。

〈寝もやらぬ
目にこそ浮かべ暁の
空かと思えば
白い月なり〉

眠ることはなく、
相手の動きを感じ、
赤いものの中に
白い月の隙を見たら
刀を一気に振り下ろし、
相手を切る。

藤沢周平の小説
『孤立剣残月』が
「残月の決闘!」という
時代劇ドラマになった。
小鹿七兵衛を演じる
加藤剛が素晴らしかった。
刀捌きだけでなく
武士としての佇まいが。