天体の魅力

日本文壇の異端児、
稲垣足穂の『横寺日記』は
星や月が好きだった足穂の
夏から秋にかけての
夜空を見上げての日記である。

足穂が本屋で見つけた
野尻抱影の『星座巡礼』には
「天体の面白味は星座の形を
判じる所には無い」とあり、
足穂は次の言葉にも共感する。

野尻は述べてる。
「星座の面白味は星々の色や
光具合や潤いを当方の気持ちに
結びつけ先方から多くのことが
囁かれていることに共鳴する点にある」

夜空の星は煌めく宝石であり、
天上に咲く花々なのである。
それらが自分に訴え来る声に
そっと耳を傾けることが
天体の大いなる魅力なのであると。

『横寺日記』には足穂が見た
様々な星座や星が出てくる。
ケフェウス、ペガスス、オリオン、
カシオペア、プレイディアス、
ベルセウス、アンドロメダ‥‥。

牛飼い座の赤色巨星、アークトルス、
ケフェウスのガーネットスターμ星、
牡牛座のダイヤモンド、アルデバラン、
蠍座のアンタレス、馭者座のカペラ、
オリオン座のペテルギウスとリゲル。
南の魚座のファルマルハウト‥‥。

月を見ても女神の顔を見たり、
土星や木星、輝く金星も愛する。
足穂が見た星や星座を調べれば
童心に返ったように楽しくなり、
古代ギリシャ人の心までがわかる。