クラウディオ・アラウ

小さな顔にたっぷりの髭を生やし
瞳は妙にぎらついていて
眉毛も太く睫毛も長い。
謎のイタリア貴族のような
風貌のどこにこのような
繊細で感性豊かなピアノの
音色が醸し出されるのだろう。

クラウディオ・アラウ。
チリで神童と謳われ、
ドイツに留学して
華々しくデビュー。
ニキシュやメンゲルベルク、
フルトヴェングラーと共演、
不動の人気と地位を確立する。

20世紀の巨匠と言われ、
晩年までアメリカを中心に
精力的に演奏活動を行った。
抑制のきいた大人の世界、
噛めば噛むほど味が出ると
玄人好みの演奏家だった。

そんなアラウが亡くなって
30年以上が経った今、
僕は彼の熱烈なファンになった。
それもベートーヴェンの
ピアノソナタ「テンペスト」、
たった1曲で痺れてしまった。

ベートーヴェンの他のソナタや
コンチェルトはもちろん、
ブラームスやショパンも素晴らしい。
リストの超絶技巧練習曲第3稿は
もんどり打つほどの凄さである。
嗚呼、生演奏も聴いてみたかった!