トンボのレース
テラスの出入り口は
蛇腹で開閉する木製の
アコーディオンドアが
付けられている。
その上部はとんがりが
6つの頂きとなって
その1つ1つに
トンボが止まっていた。
6匹の黄トンボは
皆同じ方向を向いていて
今にも飛び出しそうな
構えを見せていた。
「これはレースだ!」
第1のコースから
第6のコースまで
水泳選手のように並んでいる。
僕は6匹の後ろに回り
「ヨーイ」と心の中で唱え、
「パーン」と両手を
思い切り叩き合わせた。
6匹のトンボは一斉に
飛び出して行った。
ほとんどがコースを外れたが
1匹だけ真っ直ぐに飛んだ。
綺麗な飛翔だった。
ゆったり羽ばたいて
一直線に飛んでいった。
優勝は3コースのトンボだった。