『悲しみよ こんにちは』
フランソワーズ・サガンの処女作
『悲しみよ こんにちは』を
高校生の頃に初めて読んだとき、
モチーフとなるアンニュイの情感に
やり場のない憤りが込み上げたものだ。
映画はジーン・セバーグが主人公を演じ、
魅力的なショートヘア「セシルカット」が
大人気になったりと一世を風靡したが、
ラストシーンの自動車事故に何といえぬ
不条理さに心の澱がたまってしまった。
ところが何年かしてたまたま
原文のフランス語で読んでみたら
すっかり印象が変わってしまった。
流れるような文体でまるで詩を読むよう。
ストーリーまで珠玉に思えてしまった。
ポール・エリュアールの詩
「La vie immediate」を引用した冒頭。
「Adieu tristesse Bonjour tristessse」から
タイトルの成り立ちを知るととともに、
グイっとサガンの世界に引き込まれた。
海外小説はオリジナルで読むべしと
亡くなった恩師が言っていたっけ。
それは詩や詩のような文章なら
発する音が重要なファクターとなるわけで
当然と言えば至極当然のことだろう。
でもそのときからサガンに夢中になった。
フルートのソナタを静かに聴くように
アンニュイを感じて文章を読むことができる。
無上の喜びを読書に感じるひととき。
そのソナタは『ブラームスはお好き』かと。