侘助

散歩の際に
侘助を探している。
人物ではなく、
椿に似た花である。

椿は八重咲きだが、
侘助は一重咲きだ。
椿よりも小ぶりで
筒状の筒咲きである。

猪口咲きとも呼ばれ、
酒飲みには可愛い
花柄のお猪口のよう。
一杯やりたいものだ。

侘助を知ったのは
庄野潤三の小説、
『夕べの雲』で、
庭に咲いていた。

愛らしい花についた
田舎じみた名前の
ギャップに驚き、
侘助が好きになった。

千利休の下男で庭男の
名前が侘助だったとか。
故に茶人に愛され、
茶室の一輪挿しになった。