すっぽんの刺身

江戸の居酒屋の風情、
お品書きの刺身に
すっぽんがあった。
鍋は食べたことがあるが、
刺身はない。
興味が湧いて注文する。

赤身の肉に肝臓と心臓。
どれも切り身は小さい。
赤身は前足の部分。
コリコリして旨い。
鶏のせせりに似ているか。
山葵よりも生姜が合う。

肝臓はかなりの茶色。
まったく臭みはなく、
とろっとした感触。
心臓はとても小さく、
透明な赤はルビーのよう。
貴重な味わいだった。

居酒屋の小さな窓が
暮れていった。
風流な刺身を食べ、
燗酒を愉しむ。
江戸の人になった、
そんな気がした。