「メイズ・オブ・オナー」

英国紳士が小さな円形のパイを

ナイフ&フォークで小さく切り

口に運ぶ姿は何ともユーモラス。

しかしこのチーズタルトパイ、

「メイズ・オブ・オナー」は

6人の妻を持った好色漢、

ヘンリー8世王がとても愛し、

若妻アン・ヴーリンに作らせた

由緒ある伝統の菓子である。


ヘンリー8世はあまりの美味しさに

この「メイズ・オブ・オナー」の

レシピを鉄製の箱に入れて鍵をかけ

門外不出にしたといわれる。

さらにはこの菓子を作る侍女を

宮殿に閉じ込めて王族だけに

このパイを作らせたそうだ。

しかしいつの日かある店だけに

そのレシピが渡ったのだとされる。


その店はロンドンはリッチモンドの

キューガーデン王立植物園そばの

「ニューエンズ」なる名の菓子屋。

なんともクラシックな風情漂う

ティールームで洒落て食べるも良し、

こっそりテイクアウトするのも良し。

今も大人気のタルトパイなのである。

近くに住む義理の叔父夫婦も好物で

「素朴な味わいがいい」と笑う。


トクコ叔母さんもマイク叔父さんも

小さなパイをナイフ&フォークで

食するのはいかにも上品だけど、

本当は手づかみで食べたいはずだ。

ガツッと食らえばほぼ二口でいける。

それをご丁寧に食べるところが

英国紳士淑女たるものなのだろう。

ヘンリー8世の食べ方はどうだったのか。

ワイルドな王は手づかみだったに違いない。