指の脂

重ねた紙が上手く

剥がせなくなった。

合唱団のコンサートの

チラシを10枚ずつ

仕分けするときだった。


ある日突然、それを

感じたわけだけど、

考えて見ると、

束ねたお札が

数えらなかった。


生ものを入れる

スーパーの薄い袋を

上手く開くことが

できなくなっていた。

いろいろ思い当たる。


要は指に脂分がない。

かさかさの指だから

滑ってしまうのだ。

手にも脂分がない。

歳をとったのだ。


歳を取るというのは

突然にやってくる。

でも本当は、じわじわ

やってきていることに

気づかなかっただけだ。


しかし歳を取ったと

知ったときのショックは

かなりあるものだ。

一気に老け込むような

気がしてしまう。


肌の潤いってやつが

必要なのでしょう。

でもその潤いは

体の内側から出したい。

ジュワッと出したいのだ。