春のたけのこ掘り

何年か前に

所沢に住んでいる

妻の叔父の家の

裏庭にある竹林で

たけのこ掘りを

させてもらった。


叔父さんは農学部の

名誉教授だったが、

僕らのたけのこ掘りに

長靴を履いて

つきあってくれ

堀り方を教えてくれた。


土から芽が出ている

そんなものは目もくれず

土が盛り上がっている

そうしたところの

周りを少しずつ慎重に

スコップを振るうのだ。


柔らかく薫り高い

新鮮なたけのこを

掘り起こせる。

太くて短い立派な

たけのこが

たくさん手に入った。


近所に配って残った

たけのこを茹でる。

とうもろこしを

茹でたときと似た

もの凄くいい香りが

台所を超えて漂う。


笑顔の叔父さんは

いま認知症を患い

施設に入っている。

もう一度叔父さんと

たけのこ掘りを

やりたかったと思う。


アクのない香り豊かな

たけのこの刺身と

若竹の煮物が今も

よき思い出である。

春の楽しい心に残る

たけのこ掘りだった。