里谷多英とモーグル

長野五輪前年の夏、
里谷多英の練習を見に、
山形県の月山を訪れた。

夏なのに残雪があり、
凍ったザラメのようだった。
急斜面に無数のコブがあった。

多英はコブの頂点を
トントンと飛び跳ね、
超高速で滑り降りる。

途中のジャンプ台から
豪快なエアを繰り出し、
空中で大きくて足を開いた。

翌年の長野五輪で
多英は金メダルを獲った。
多英は青空に舞っていた。

僕は斜面の下から
三浦雄一郎さんと一緒に
多英の滑りを眺めた。

眺めるというより
見惚れる滑りだった。
多英のモーグル。

あれからもう
24年も経っているなんて。
昨日のことのように思う。