マダム・ボヴァリー

ギュスターブ・フローベールの長篇、
山田𣝣訳の『ボヴァリー夫人』を読了した。
1965年に中央公論社の「世界の文学」に
収録されたものを河出書房新社が
2009年に再発行した文庫本で読んだのだ。

その気っぷの良い流れるような訳文は
𣝣先生の授業での話しっぷりと同じで、
とても楽しく味わい深いものだった。
祖父は森鴎外、母は森茉莉であるだけに
𣝣先生の文才は血統と言うほかはない。

平凡そのものの医師を夫に持った女、
ボヴァリー夫人は二人の男と関係を持ち、
湯水のように金を使って破産の憂き目となり、
最後は服毒自殺を図るという三面記事を、
フローベールは文学芸術にまで昇華した。

しかし𣝣先生の訳文がなければやはり、
一人の人妻の姦通と借財事件物語で
終わっていたのではなかろうか。
𣝣先生の講義でのべらんめえ口調を
懐かしみながら味わわせてもらった。