ブナの幹に耳をあて

ブナの幹に耳を当てると、

水の流れる音が聞こえる。

水を吸い上げる音が

聞こえるというのだ。


ブナは白神山地で林立し

世界遺産になっている。

ブナ林では「ブーン」と

風の鳴る音がするという。


「ブーンと鳴る木」から

「ブナ」となり、柔らかく

木であって木で無しで「橅」、

「ぶんなげる」が由来とも。


しかしブナは枝葉を広げ

雨を受け止め、如雨露の如く

幹から大地に流し落とす。

「緑のダム」と言われる。


林床はスポンジのようで

水を豊富に溜め込み、

植物や虫たちを潤す。

「森の女王」とも呼ばれる。


幹には苔が貼り付き、

薄緑の絵を描いていく。

木に描かれた抽象画。

その幹に耳を当てる。


水を吸い上げる樹液流は

とてもゆっくりだという。

どんな音がするのだろうか。

目を瞑り全身を耳にする……。