小沼の菖蒲

小さな沼に紫と黄色の

まるで恋人同士のような

しょうぶが咲いた。

あやめだと思っていたら、

あやめは畑や草原に咲き、

水辺に咲くのはしょうぶだった。


ちがいはそれだけではない。

あやめはアヤメ科だけど

しょうぶはサトイモ科だ。

葉や花も多少違うらしい。

しかし、漢字に書くと

どちらも菖蒲と同じである。


ぼくはあやめのほうが

名前も女性的で綺麗だし、

できれば水辺の菖蒲も

あやめと呼びたいところだ。

花びらに編目の模様があり、

文目と呼ぶようになったという。


あやめもショウブも

漢字は菖蒲で同じだし、

花言葉も「良い便り」と

どちらも同じである。

小沼の菖蒲を眺めて

良い便りをもらった気がした。


恋人同士のような

紫と黄色の二草の菖蒲。

垂直にきりっと立った

凛とした姿も美しい。

天皇皇后のようでもある。

清々しい朝になった。