『怪人二十面相』

江戸川乱歩の
『怪人二十面相』*。
1936年講談社の
『少年倶楽部』に連載。
乱歩が初めて書いた
子供向けのミステリーは
爆発的な人気を得る。
それから90年近く、
今も尚読み継がれている。

怪人二十面相は
変装の名人で盗品は
金持ちの宝石や美術品。
現金には目もくれず、
人は決して殺さない。
義賊のような盗人であり、
黒マントに黒のタキシード、
黒いアイマスクのカッコ良さで
ヒーローにまでなってしまう。

何を隠そう『怪人二十面相』を
老いた今になって初めて読んだ。
捕まえたと思った怪人は
池に潜って竹筒で呼吸し、
変装して逃げ出してしまう。
名探偵の明智小五郎に化けて
難なく美術品をせしめ、
国立博物館の国宝までも
すべて手に入れてしまうのだ。

とはいえ最後の最後で
明智小五郎と少年探偵団に
つまかってしまうのだが、
怪人との知恵比べがとても面白い。
「少年探偵シリーズ」は
『怪人二十面相』が第1巻で
全部で26巻もある。
ワクワクドキドキの
少年の気持ちにさせてくれる
このシリーズ、すべて読みたい。

*ポプラ社の『怪人二十面相』巻末の解説は児童文学作家の砂田弘氏がされているが、最後に砂田氏は二十面相が気球に乗って空へ逃げるシーンが一番気に入っていると書いているが、どこにもそんなシーンはない。なぜそんなことを書いたのか、その謎解きがしたいものである。