ショパンの屍と魂
ルーマニア人が弾くショパンを聴いた。
彼は鼻が尖っていてとても似ていた。
ノクターンの2番で始まり、革命のエチュード、
華麗なる大円舞曲、ノクターンの1番を演奏した。
すべての指が長く、繊細なタッチで、
ゆったり情感を込めて弾くと思えば、
神業のような速さで鍵盤を叩いていく。
ホールに爽やかな音が風のように流れる。
うっとりとする甘い香りが漂う。
前奏曲の雨だれ、子犬のワルツ、
ノクターン15番がホールに響く。
雨が降り、犬が走り回り、月が輝く。
ジョルジュサンドがショパンを見つめる。
彼は彼女の胸の中で涙にむせぶ。
やがてマヨルカでの楽しい生活が終わる。
英雄ボロネーズ、ラストは幻想即興曲。
自分が死んだら破棄せよと言い残した遺作。
最後まで故郷ポーランドに思いを馳せた。
39歳の若さで肺を病み、死んだショパン。
「屍の肉体はパリに、魂はワルシャワに」
その遺言通りに生まれ故郷に戻れた。
葬式は自ら作った葬送行進曲が流れた。
アンコール曲はピアノソナタ第2番、
2曲目が哀しく明るい別れの歌が演奏された。
室内が一層暗くなり、ピアニストだけ照らされる。
一音一音、心を込めて奏でる。
最後は、目を閉じ、顔を天井に向け、静止した。
ショパンの魂とともに、彼の魂も天国に昇った。