鯛の中の鯛
桜色の真鯛が好きだ。
透き通った刺身の歯ごたえ、
ふわりと甘辛い煮付け、
香ばしい尾頭付きの塩焼き。
鯛は魚の王様だとつくづく思う。
煮付けは頭までしゃぶり尽くす。
すると、鯛の中に鯛を発見!
鯛の形をした骨があるのだ。
この骨から鯛は作られるのかと、
骨にある目玉を見て思ってしまう。
石津謙介さんが生前、
この鯛の骨を集めていた。
書斎の机にある灰皿の中に
鯛の中の鯛がたくさんあった。
「この骨、好きなんだよ」
鯛が好きだから骨も好き、
骨が鯛だから尚のこと。
一番大きくて綺麗な骨の
目玉に細長いチェーンを通し、
ペンダントにしていた。
ファンションの神様の
ペンダントが自分の食べた
鯛の骨を使ったものだとは。
ニヒルに嗤った石津さん、
「骨まで愛してだ」。