友は酒を飲み
バーのカウンターに腰掛ける。
友は酒を飲み、僕は水を飲む。
酒好きの僕が堪えられないかといえば
そんなことはない。
飲めない体になったのだから。
話も弾み、楽しくなる。
文学の話、音楽の話、
絵画の話、料理の話。
盛り上がるのだが、何かが違う。
冷めている自分がいるのだ。
友の顔は紅くなり、陽気になる。
僕も楽しいけれど、
楽しい自分を見ている、
もう一人の自分がいる。
ふたりの自分がいるのだ。
これがしらふでいるということか。
酔わないでいるということか。
酔っている友の傍らで、
ふたりの自分がいることに慣れない。
違和感が体をむしばんでくる。
友の酔った顔を冷静に見ている、
楽しい自分としらけた自分。
とても哀しくなってくる。
嗚呼、と叫びたくなる。
涙がじわっと溢れ出てくる。