心の翼に乗って

祭壇はゴルフ場の
グリーンになっていた。
たくさんの花で
満ち溢れたグリーン。
左サイドにピンが立つ。

ゴルフを愛した男が
癌と闘っていた。
抗癌剤を打ちながら
精力的に仕事をこなした。
まだまだ生きると思っていた。

この夏、容体が急変、
あっという間に死んでしまった。
大きな葬儀だった。
たくさんの人が弔問に訪れた。
だからといって哀しみは薄れない。

ゴルフ場を象った祭壇の下に
彼のゴルフウェアと
クラブの入った
ゴルフバッグと目土袋、
今にもショットを打ちそうだった。

葬儀場内には彼の好きだった
「Cocoroの翼」が流れていた。
佐世保生まれの彼の幼馴染み、
シンガーソングライターの
諸岡ケンジさんの歌だ。

♬泣かないで ほら 心を開いて
泣かないで ほら 明日に向かって
うつむかないで 心を開いて
君が描いた 明日に向かって♬
彼も一緒に歌っていただろう。