民族浄化からエネルギー目標へ
ハマスとイスラエルの戦争は、私たちが国際メディアで目にするものだ。 民族浄化とは、見出しの裏で起こっていることである。
ModernDiplomacy
ダン・スタインボック博士
2023年12月24日
元記事はこちら。
ハマスとイスラエルの戦争は、私たちが国際メディアで目にするものだ。 民族浄化は見出しの裏で起こっていることだ。 そして、占領地に埋蔵されたエネルギーを支配するための闘争が、その新たな舞台である。
10月下旬、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「意図的な民間人の殺害、負傷、誘拐を正当化することはできない」と述べ、「ハマスが真空地帯で起きたわけではない」[i]と付け加えた。これはバランスを取ろうとする努力であったが、すぐに党派的狂信者たちによって誤って伝えられた。
以下は、この「空白」の物語である。 つまり、過激派入植者のテロと、和平の機会を逃したこと、長年の民族浄化、そして莫大な埋蔵量を誇る海底石油とガスを支配するための努力である。
失敗したガザ蜂起のシナリオ
1990年代後半、パレスチナ自治政府はブリティッシュ・ガス（BG）と契約し、ガザ沖で確認された油田とガス田を開発した。
天然ガス産業が発達しているエジプトは、陸上でのハブとして、またガスの中継地点として機能することになる。 BGは収益の90％を得る代わりに、ガザ地区が受け取るのはわずか10％で、その上、ガザ地区が必要とする十分なガスも入手できる。
1999年、バラク首相はイスラエル海軍をガザの沿岸海域に派遣し、PAとBGの取引を妨害した。 イスラエルは、ガスを自国の施設に市場価格以下で供給することと、パレスチナ人向けの収入をすべて管理することを要求した。
2006年以降、ガザの民主化選挙でハマスが勝利を収めると、英国のトニー・ブレア首相による超現実的な介入が行われた。ブレア首相は、ガスはエジプトではなくイスラエルに供給され、資金はまずニューヨークの連邦準備銀行に届けられ、将来的に分配されるという例外を除いて、旧来の取引構造を提案した。
この2つの口実によって、パレスチナの限られた予算による自治はオスロ合意とともに消滅し、将来の戦争への道が開かれた。
ハマス率いるパレスチナ統一政府がこの不可能な申し出を拒否すると、イスラエルのオルメルト首相はガザ封鎖を行った。 「経済戦争」は「政治的危機」とハマスに対する蜂起をもたらすと予想された。 イスラエルはパレスチナ人を「ダイエットさせたが、飢え死にさせたわけではない」[v]。
それゆえ、マタン・ヴィルナイ国防副大臣が警告したように、ガザを「ショアー」（ヘブライ語でホロコーストの意）にさらすために、イスラエルは2006年の「キャスト・リード」作戦を開始した。 ネタニヤフ首相の現国防相であり、現在は「ハマスというものを地球上から消し去る」と公言しているヨアヴ・ガラント司令官は、「ガザを何十年も過去に送る」ことだと語った[vi]。
6440億ドルのエネルギー備蓄
作戦はガザに壊滅的な被害をもたらしたが、ガス田の支配権をイスラエルに移すことはできなかった。 2008年から9年にかけて西側諸国が大不況に見舞われたため、ネタニヤフ新政権は、イスラエルがガス供給の40％を失い、「アラブの春」によって深刻化したエネルギー危機に苦慮することになった。
エネルギー価格が高騰するなか、イスラエルでは過去数十年で最大の大規模デモが発生した。
皮肉なことに、ネタニヤフ政権は、地中海東部の沖合に位置するレバント海盆で、回収可能な天然ガスの巨大な鉱区が発見されたことで救われた。 イスラエルは、新たに確認されたガス埋蔵量の「大部分」がイスラエル領内にあると主張し、これがレバノン、シリア、キプロス、パレスチナによる反対主張に火をつけ、緊張を高めた。
2010年の米国地質学調査に基づくと、レバント盆地の石油・ガスは122兆立方フィートの天然ガスと17億バレルの回収可能な石油に相当する（図1）[vii]。
図1 レバント盆地の石油・天然ガス資源量
2019年、国連貿易開発会議（UNCTAD）は、占領地は、占領下のヨルダン川西岸地区Cとガザ地区沖の地中海沿岸にある、石油と天然ガスの豊富な貯水池の上に位置していると報告した。 しかし、占領は、パレスチナ人がそのような資産を開発し、利益を得るためのエネルギー田の開発を妨げ続けている。 出典 国連貿易開発会議（UNCTAD）
この資源争奪戦における経済的利害はどのようなものだろうか。 2023年の米ドル換算で、これらの資源の価値はそれぞれ5,570億ドルと870億ドルになる。 合計で約6440億ドルだ[viii]。
しかし、もっと多くの危機があった。
160～550億ドルのベングリオン運河
エジプトにあるスエズ運河は、紅海およびスエズ湾と地中海を結んでいる。 世界の貿易の約12％が年間18,000隻の船でスエズを通過する。 2021年3月には、座礁したコンテナ船によって6日間も封鎖された。 もし代替のパイプラインがあったとしたら？
19世紀半ば、イギリスは死海を経由して紅海に至る運河の提案を検討した。 1960年代初頭には、イスラエルのネゲブ砂漠を掘削するために520発の核爆弾を使用するというアメリカの極秘の提案があり、物議を醸した。 イスラエル国営のヨーロッパ・アジア・パイプライン・カンパニー（EAPC）とアラブ首長国連邦を拠点とするMED-REDランドブリッジが、紅海から地中海に石油を移動させるためにエイラート・アシュケロンのパイプラインを使用する契約を結ぶ2020年10月20日まで、このアイデアは冷戦の間、秘密にされていた。 興味深いことに、これはイスラエル、UAE、バーレーン間のアラブ・イスラエル正常化に関するアブラハム合意のわずか1ヵ月後のことである。
2021年4月、イスラエルはベングリオン運河の工事を夏までに開始すると発表した。 建設には約5年かかり、30万人のエンジニアと技術者を雇用すると予想された。 推定費用は160億ドルから550億ドルで、運河は年間60億ドル以上の収入をもたらすと期待されていた（図2）[ix]。
図2 ベン・グリオン運河プロジェクト
ガザ地区を避けるように設計された当初の計画ルートのひとつ（赤い色の軌跡）： Datawrapper で作成された「The New Arab
ネタニヤフ首相の極秘計画
世界的なパンデミックの後、ドバイで開催されたCOP28のホスト国であるUAEは、イスラエルの環境保護主義者たちが猛反対した物議を醸す計画から距離を置いた。 秘密組織であるEAPCには、暗い環境問題の記録があった。 2011年にはイスラエル最悪の自然保護区災害を、2014年にはイスラエル最悪の環境災害を引き起こした[x]。
奇妙なことに、1月、ネタニヤフ内閣は反対にもかかわらず、EAPCの機密保持を延長した。 7月にエイラート湾にあるEAPCのターミナルの交通量が急増すると、活動家たちは差し迫った災害を警告した[xi]。
10月7日までに、ネタニヤフ政権と巨大運河プロジェクトの間に立ちはだかっていたのはガザだけだった。 それゆえ、1990年代にはまだガザを支配していたパレスチナ自治政府を弱体化させるための協調的な取り組みが行われた。この試みは、ネタニヤフの賭けから始まったものであり、沖合に埋蔵されているエネルギーと運河建設案を引き継ぐ取り組みと並行して行われた。
7,400ワードに及ぶ分析の原文は、『ワールド・ファイナンシャル・レビュー』誌（12-1月号）に掲載された。https://worldfinancialreview.com/displacing-a-nation-what-led-to-and-caused-the-gaza-israel-catastrophe/。
[i] "'戦争にもルールがある'と事務総長が安保理に訴え、中東の全当事者に国際人道法の遵守とガザへの無制限の援助を要求". 国連プレスリリース、2023年10月24日。
[ii] Schwartz, M. 2015. "The Great Game in the Holy Land". TomDispatch, Feb 26.
[iii] Nafeez Mosaddeq Ahmed. 2012. "Israel's War for Gaza's Gas.". Le Monde Diplomatique, Nov 28.
[iv] Schwartz, op.
[v] Urquhart, C. 2006. "Gaza on brink of implosion as aid cut-off starts to bite.". The Guardian, Apr 16.
[vi] "Barak: Hamas Will Pay for Its Escalation in the South.". Haaretz, Feb 29, 2008; "Israel's new war cabinet vows to wipe Hamas off the earth.". Reuters, October 12.
[vii] Schenk, C. J. e al. 2010. Assessment of Undiscovered Oil and Gas Resources of the Levant Basin Province, Eastern Mediterranean. US Geological Survey, March.
[パレスチナ人にとってのイスラエル占領の経済的コスト： The Economic Costs for Israeli Occupation for Palestinian People: The Unrealized Oil and Natural Gas Potential. UNCTAD。 2019.
["Israeli pipeline company signs deal to bring UAE oil to Europe.". Reuters, Oct 20, 2020.
[x] "内閣、国有石油インフラ企業の機密保持を延長、反対にもかかわらず". Times of Israel, Jan 29, 2023.
[xi] "エイラートの石油タンカーの数は5倍に急増し、リスクは高まっている". Haaretz, Jul 13, 2023.
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