AI(人工知能)に負けない子どもを育てるには

「ロボットは東大に入れるか」(東ロボくん)プロジェクトを率いた数学者・新井紀子さんの著書『AIに負けない子どもを育てる』(東洋経済新報社 1760円)には、子供の勉強を考える際に留意すべき多くのことが分かりやすく書かれており、とても参考になりました。

天動説から地動説に

例えば、「算数での割り算や分数は、子供が初めて出会う『相対』という概念。・・・自分を中心に世界を理解する絶対的な価値観の中で生きてきた子供にはハードルが高い。いわば、天動説から地動説に変わるようなもの」という指摘は、なるほどなと思わされました。

小学校高学年では、「主観から客観へ、絶対から相対へ、具体から抽象へとジャンプが必要になる。(そのための力を)言葉と論理を通じて獲得する」ことの重要性を強調しています。論理的にじっくり考えることをせずに、暗記とドリルに頼る勉強ばかりだと、中学生以降なかなか伸びることができない、と警鐘を鳴らしています。

有名私大にも合格可能なAIに負けないためには

本書の最後の方には、幼児期に始まり、小学校低学年、中学年、高学年と学年が進むにつれ、どのような勉強をすれば「AIに負けない(=将来AIに職を奪われない)子供」になれるかが、具体的に書いてあります。

「東ロボくん」プロジェクトでは、AI技術で「センター模試」の偏差値が57.1となり、首都圏のMARCHや近畿の関関同立といった有名私立大学の一部学科の合格可能性が80%以上という判定が出ました。

大学入試問題で、このぐらいの実力を持つAIに負けないためには何が大切かを考える中で、新井さんは、多くの子供たちが今、教科書を正確に読めていないことに気づきました。詳しくは、本書の1年半前に出版された『AI vs. 教科書が読めない子どもたち 』に書かれています。2冊とも、子供の教育を考える上で、とても示唆に富む内容だと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?