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PERCHの聖月曜日 5日目

その頃、木村荘八が、近くに住んでいて、ある本にこういうことが書いてあるよといって見せてくれたことがあります。それには、ルノアールという有名な絵描きがいて、この人が、フランス全部にいる無数の絵描きのうち、もし半分が工芸家になってくれたなら、絵描きも過当競争をさけることが出来るし、工芸家もまた、質を向上させることが出来るし、一挙両得だという一文がある。はっきりした文章は忘れましたが読ましてもらうと、そういうふうな意味でした。私は、偉い絵描きもこういうことをいってくれたと思い、自分はそうとは知らずに、陶芸の方に道を切りかえたということをここに証明してくれた人がいるような気がして、子供心に、確信をもって、それから焼物一途に歩きだしたのです。

––––濱田庄司『無盡蔵』 講談社,2000年(底本 1974年 朝日新聞社)

木村荘八《壺を持つ女》1915年

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