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PERCHの聖月曜日 88日目

昭和五十一年七月三十一日(土)[木内克先生応接室]

こんど西武美術館で「ドガ展」をやるらしいね。
踊り子、馬、裸婦とドガの主要作品が全部展観出来るらしいから、うれしいな。
油彩、パステル、デッサンそれに彫刻も加えられている、立派な展覧会になるようだ。
大体、ヨーロッパで名の知られている画家の絵は、どれも彼も、彫刻をやれるような絵を描いているんだよ。
日本の場合、彫刻をやれるような絵を描いている人は少ないな。
パリにいた、若い頃、ロワイヤル通りに彫刻だけを扱っている画廊があってね。その画廊に、美術館や他ではあまり見ることの出来なかった、ドガの彫刻がたくさん置いてあったよ。
ぼくはそのなかでも「浴槽」という彫刻が、いちばん好きだった。彫刻として、第一級の作品だと思ったよ。
勿論、ドガは自分の絵のために、どしどし塑像制作をしたようだ。だから、自由で、のびのびしていて、動きもキレイだし、だいいち邪気がなくていい。
絵描きの彫刻というと、どういう作家がやっても相対的にやわらかいか、弱いものだが、ドガの彫刻はそういう意味でも大変立派な作品ばかりだったな。
ぼくは今、ぼくなりの判断で、ヨーロッパ画家たちの彫刻ベスト六を勝手に作ってみたよ。
第一位は文句なしにゴーギャンで、第二位はドーミエ。第三位はこのドガで、第四位はピカソ。第五位はルノワール。第六位はマチスだな。
ピカソの彫刻は強くていいはずなのに案外弱いし、ルノワールにはちょっとあやふやなところがあるンだよ。

ーーー和田敏文『木内克の言葉』農山漁村文化協会,1978年,pp130-131

Unknown
Head with Horns
before 1894

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