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割烹でアルバイトを始めるの巻③(7月11日記)

葉山在住のTさんから「明日、日帰り京都出張なんだけど、夜、時間ある?」と連絡あり、土曜日に会った。

19時にうちの近くの「安東」という焼肉屋に行き、30分ほど祇園を散歩したのち、21時20分に「わしょく宝来」の大将から「席、空きました」と連絡があったので、向かった。

「宝来」とは、私がアルバイトをしている割烹だ。最初に行ったのは昨年の8月。その後ひとりで、もしくは友達を連れて何回か行き、先月の6月23日から働き始めた。アルバイトとして雇われてからお客として行くのはこの日が初めてで、正直、とても照れくさかった。顔がなんだかニヤけてしまう。みんなもなんだか照れくさそうだ。私はなるべく平静を装い、生ビールを注文した。

Tさんは宝来で食べるために焼肉屋では肉と野菜しか食べなかったので、黒板を見て、「さば寿司食べたい。あと、ホーリーがオススメだと言った、はまぐりにゅうめんも」と言った。

私はまず、れんこんまんじゅうを頼んだ。前々日の木曜日にれんこんを30分間擦りおろし、そのあと味付けしてから粘りが出るまで鍋で煮炊くという下拵えをしていたので、完成したお料理がどうなるのか見たかったし、食べたかったのだ。

あとは鱧刺し、小鮎の白焼き、万願寺とうがらしの炊きものを注文し、お通しでトマトそうめんが出たので、はまぐりにゅうめんをじゃこ山椒出汁茶漬けに変更した。

当たり前だけど、お皿やお椀はすべて見覚えがあった。皿洗いをしているからだ。客として来ていたときに記憶されなかったものが、いまはあれはこれ、それはどれ、とわかる。カウンターに座ってみる店内は、働いているときと目線も違う。暖簾の向こうの調理場でのスピードとか緊張感を知ってしまったから、余計にすべてが愛おしかった。そして、れんこんまんじゅうは、とてもとても美味しかった。お通しのトマトそうめんも、アルバイト初日にミニトマトの皮剥きをしたので、グッときてしまった。

Tさんは土産にじゃこ山椒を2袋購入してくれた。家でご母堂とお茶漬けにして食べるという。お母さん、喜んでくれるといいな。

帰り際、料理人の富田さんに「これからROPEですか?」と言われた。「バレてる」と笑うと、「さっき緑茶ハイがどうのって言ってたから」と言われた。美声で歌の上手いTさんをカラオケスナックROPEに連れて行かない手はない。(あ、Tさんは前日に、京都駅前のホテルを予約したのでした。)

かくして私たちは大将と富田さんに見送られ、角を曲がって1分のROPEに行ったのだった。

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