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精神世界

眠れない夜はこっそり船に乗る。ぷかぷか揺れる海の上では時折魚の音と遠くの街の歓声が聞こえる。全てを置いてただ1人で月の下オールを漕ぐ。

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わたしは今、とてつもなく深い絶望の中にいる。絶望は暖かく、暗く、わたしをゆっくりと締め上げる。上を見上げると自分の吐いた小さなあぶくが見える。もうそろそろ酸欠になりそうだから登らないと、そう思っても体は言うことを聞かない、。誰か・・けて、毎日この繰り返し。

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最近好きなパン屋さんがある。お気に入りはベーコンエピ。焼きたてももちろん美味しいが、冷たくなってもそれはそれで最高。あーあ、あたしもこのパンみたいにどんな角度からも愛されて、丸ごと食べられちゃいたいな、なんて思う。

2000円分くらいパンを買って、パンが酸素かのようにむさぼる。息を吐く暇もない勢いで食べて、ふと我に帰る。あたしって小麦粉アレルギーなんだった!もうそこからは大変、身体中に蕁麻疹が出てかゆいかゆい。ホエイなんちゃらって名前の常備薬を塗って、急いで保冷剤で冷やす。かゆくなるの分かってたのにどうしてこんなに食べちゃったんだろう?人生ってこんなことの繰り返しなのかもしれない。

小学生の頃は1〜6年生まで通知表に必ず「男の子に対してすぐに手と足が出ます ご家庭でお話ししてみてください」と書かれていた。殴ったらだめ!蹴ってもだめ!代わりにどうしたら良いのか誰も教えてくれなかった。だって男子ったらちゃんと掃除はしないし、女子の更衣室覗こうとするし、泣いてる子のことからかおうとするし、そっちの方が悪いんじゃない?って思ってた。

6年生にもなると流石に暴力は良くないことって覚えたけど、でもどうしても我慢できないから殴っちゃう。教室の後ろで髪の毛引っ張り合いながら喧嘩するあたしたちをみんな冷たい目で見てた。
本当にダメなことなんだな、と再認識した。

小学校を卒業したあとは女子校で6年間過ごした。そこは天国でも地獄でもなく普通に息の出来る場所だった。柔らかくてかわいい女の子に手を上げるのあり得ないから昔みたいな事件もなく、親は安心してたみたい。でも大学に入って彼氏ができてもう一回思い出したの、男って殴らなきゃ言うこと聞かなくない?!共感力が無いくせにプライドが高いんだもん。でもあたしは法学部だから一応暴行罪とかデートDVとか習ったし、もうどうしようもない!

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でも、どうしてこうなったんだろう?先のことも考えず遠くまで来てしまった。船から見える街はもう豆電球くらいの小ささで。
もう帰れないな、ふとつぶやいた。

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