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ス・テ・キ IN THE ANGRY

「お客様に迷惑がかかるんです!」


あなたの職場は、フレンチレストラン。
ホールの仕事だ。
一皿さげて、一皿運ぶ。
前菜から魚、肉、デザートまでそれを繰り返す。

一皿ごとに出来立ての料理を楽しむ。
それがレストランの醍醐味でもある。

そうしたコース料理の提供のためには、厨房とホールスタッフの連携が欠かせない。

あのテーブルのお客様は、前菜を半分くらい食べ終えている。
向こうのテーブルの魚はもうすぐさがる。
あちらは今、離席中だ。

ホールスタッフにしか分からない情報を厨房へ共有する。
そして、テーブルごとの次の料理をオーダーする。
ホールからのオーダーがかからなければ、料理は登場しない。
ということは、オーダーのタイミングが遅くなれば、
それはお客様を待たせるという事になるのだ。


ある日のランチタイム、厨房の中、

なんで何も言わないんですか。
お客様が待つことになるんです。
お客様に迷惑がかかるんです!

あなたの声が響いた。
お皿をさげてきても何も言わなかった後輩に、あなたは怒った。

普段は誰よりも穏やかなあなた。
一瞬ためらうような顔をしたけれど、あなたはすぐに自分の業務に戻っていった。


あなたも怒ることがあるんだ。

僕は驚いた。
でも、怒ったあなたは素敵だった。

あなたのお客様への熱い想いだから。
あなたから後輩への期待だから。
だってそれは、あなたが本気だから。

人が怒るということは、その人が本気ということだ。

周りのスタッフも、
もしかしたらあなたも自分の怒った姿に驚いたかもしれないけれど、
僕は、うれしかった。
本気のあなたを見ることができて、とてもうれしかった。

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