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Ksスタに声援が戻った日~7.2横浜FC戦~

2022年7月2日。
830日ぶりにケーズデンキスタジアムに声援が戻った日。
それは、「声援」がサッカーにおける立ち位置を再確認し、サポーターの進化、深化を指し示す日でもあった。

声出し応援運営検証試合の名のもとに、実験という形で一部エリアで声出し応援が解禁される。
リスクを極端に嫌う国民性の中で、この実験に加わる決断を下すのは並大抵のことではなかっただろう。
小島社長もいろんなこと言われたみたいですし。

とはいえ、コロナウイルスがなくなることは皆無と思ってよく、変異と変化を繰り返す中で攻めと守りのバランスはとっていかなければいけない。こうJリーグが一貫してずっと考え行動してくれたことに敬意を表したいし、もっと評価されていい。

2020年、世界がコロナ禍という名のディストピアと化し、感染対策という名のもとに世間は我らサポーターから声を奪う魔法をかけてしまった。
(不条理をわかりやすくするためにあえて「魔法」という表現を使いますけど、決して感染対策自体が悪というわけではないので念のため)

この魔法を、どうしたら解くことができるのか。
解くことができないとしても、どういう行動ができて世間に受け入れられるように提示し、魔法を解いてもらえるように納得してもらえるか。
その積み上げの最終ステップとして、一時的に魔法を解くところまで、私たちはスキルを上げた。あとは、解くタイミングと手順さえ間違えないようにするだけだ。ここで間違えると、消えかけたディストピアを再び召喚することになってしまう。それだけは避けたい。

かくして、魔法が一時的に解かれる日がやってくる。水戸の解禁日は、7月2日。
魔法による呪縛からときはなたれた時、サポーターはどうなるのだろう。

7月2日のバス待ち。期待が大きく膨らんでいるのがわかる人の入りだった。

自分はどうなるのかは実験ではなく本番で分かればよいので、まずは周りがどうなるかが見たい。そして、コロナ禍を経験した830日間、積み上げてきたあらゆるものを否定するのか、肯定するのか、どちらに心が振れるのかを肌で感じたかった。かくして、自分はいつもと同じメインスタンドに座ったのだ。

7月2日、午後5時。その時は、やってきた。

メインにも、もちろん届いていました。

興奮のあまりハッシュタグが安定していないのはご愛敬です(汗)
考えてみれば。皆さん不織布マスク着用の上でのこの声量なんですよね。
サポーターの思いが伝わってくる。。。

そして、試合前のロンバルディアも。

泣いた。全俺が泣いた。

2019年最終節のそれと比べたら人数という意味でまだまだかもしれないけれど、確実に「戻ってきた」と思える声量だった。ちリトル・マーメイドのアリエルが魔女の魔法から声を取り戻しても、ここまで大きくは歌えないだろう。


そしてそれを包み込むように、力強く後押しするメインスタンドのクラップ。このクラップの音量が、再開前とは段違いに大きかった。2019年最終節と比べても半分の人数しかいないはずなのに、だ。

この830日、応援でできることといえば拍手を送ること。その唯一持てる武器を最大限生かし、ホーリーホックという遊び場を守り続けた結果、かつてとは比べ物にならないほど、手拍子への感度がよく、力強くなった印象を持った。

ハイライトでもわかるとおり、水戸のチャントは声だけ、というよりも全体的に手拍子が登場する機会が多い。太鼓と手拍子でリズムが整えられ、そこに声援と歌が言霊のシャワーとなって選手たちに降り注いでいく。手拍子のビートがぶ厚くなることによって、より言葉が選手に届きやすくなっているように感じた。
これこそが、830日間ずっと、研ぎ澄ましてきた応援の進化の証明。これを感じられただけでも、あえてメインスタンドを選んだ甲斐があった。

応援の後押しを体現するかのように、水戸の選手たちは序盤からガンガンプレスをかけていく。それをかわしリズムをつかもうと努力する横浜FCの選手たち。
勝負こそミスの有無や最後の決めきる力で白黒つく結果となったが、試合の密度、強度は声援がない時よりも格段に濃く、激しくなった。
まるでしおれた植物が肥料をもらって息を吹き返したように、ピッチ上の選手は躍動してくれた。素晴らしい試合を展開してくれた、両チームの選手たちにお礼を言いたい。

木下選手のヘディングゴールからのゆりかごダンス。タビナス選手、ほかいろんな人への想いが、つまってた。

声援がなくても、サッカーの試合自体はできる。
でも声援がないとサッカーじゃない、とサッカーファンが言うのは、羅音楽ライブのコール&レスポンスのように、直接声をピッチ上に届けることによって、試合の密度が濃くなることを経験則上知っているからなんだ、と納得する。そして、一度その経験値を会得すると、さらに後押しをしたくなる。それがサッカーの魔力であり、他競技にない魅力だと、改めて思う。

かくして、夢のような90分は終わりを告げた。試合には負けたが、久々に声援のある応援が聞けた充実感からか、悲壮感はなかった。次やってくれればいいさ。
事前に聞いていたプロトコルに違反するような行動がほとんど見られなかったのも、好材料だ。

そしてまた、7月の2試合は再び、魔法にかけられた状態=声援のない応援に戻る。
しかし。7月2日の来場者アンケート結果が最終的な後押しになり、声出し検証試合が追加されることになった。本当に喜ばしい!
2試合きちんと守るものを守れば、再びKsスタに声を戻すことができる。

最初に書いた通り、今はまだ感染対策という名の魔法をどう解いたらいいか模索している最中だ。身勝手な行動はむしろ逆効果を生みかねない。
だからこそ、信頼と実績とデータを積み重ねて市井の人にも納得してもらえるようにしなければいけない。

でも7月2日を経験した自分だから言える。

万難を排しつつ、全力で前に進もうと懸命に努力しているクラブと、そのクラブから信頼され、節度をわきまえつつ、選手へ懸命の後押しをしようとするサポーターと、そのサポーターの期待に全力でこたえようとする選手がいる水戸であれば、魔法が解くカギがみつかるような気がする。

次の声出し検証試合は、バクスタに加わってみようかな。



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