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2023年5月20日(土)

前回、喫茶ホリを訪れたのは3月。
そこからイベントの準備もあり、2ヶ月空いてしまった。
まだお店には2回しか行ったことはなかったが
「ホリさん元気かな」と思うようになっていた。

おしゃべりが楽しいお店だ。
自分の住む家からは約1時間ほどかかるため、
せっかく足を運ぶなら、後ろに予定がない余裕のある日が良い。
そう考えていると、今日ちょっと行こうかなという日が遠くなっていた。

5月に控えていた自分の中での大きなイベントも無事に終わり、もう少しで一息つけそうな土曜日。
朝から久しぶりの青空市の手伝いへ。

お昼ごはんはいつもお世話になっている野島商店さんへビリヤニを食べに行った。イベント終わりの自分へ細やかなご褒美に豆カレーをトッピングした。

この日は友人が淵野辺でお好み焼き屋でDJイベントをすると聞き、
すみだの仲間3人で向かうことを約束していた。
青空市の片付けを終えて、少し時間ができたのでホリさんのところへ顔を出すことにした。

前回から2ヶ月ほど経ち、今回が3回目だ。
顔を忘れられちゃったかも知れない。そんなことを思いながらホリの立派なガラス戸を開ける。

「おぅ。なんだ、もう来ないかと思ったよ。」

住まいが遠いこととイベントがあって中々来れなかったことを言い訳しながら席へ着く。

淵野辺には電車で1時間半かかる。そのため、今回はホリでは長居できない。
30分ほどお茶をして出ていくつもりだった。

夜はお好み焼きを食べる予定だったので、軽食は頼まずにウインナーコーヒーを注文する。

新しく連れて行った友人をみて「で、あんたはなんなの?」と辛口な一言でお迎えしていた。

こんなにグイグイ話しかけてくる喫茶店も珍しいのでは。友人のたじたじになっている様子を見て、はじめてHOLLYへ来たことを思い出す。

今となってはホリさんの歓迎のことばということも知っているから友人とホリさんのやりとりを見てにやにやしてしまう。

せっかくみんなでホリさんと話すなら、友人の紹介をしたいと思い、1週間前くらいに完成した自分の屋号ステッカーをホリさんへ渡した。

牛と鳥のかわいいイラストは、イラストレーターのサタケシュンスケさんにお願いしたデザインだ。2019年、バリスタ保健師の活動を始めた頃に書いたnoteのご縁で作成していただいた。このイラストをみると初心を思い出せる。

このデザインに「hitotemano.」という屋号をつけ
ステッカーをつくりたいと思い、2人の友人にお願いして満足のいくものができた。

「なに、この牛のシール。あんたの?」

そこではじめて自分が普段休日にイベントなどでコーヒーを淹れていることを話した。産業保健師として働いていることや、青空市の手伝いで土曜日はすみだへ来ていることは話していたが、コーヒーの活動をしていることははじめて伝えた。

「なに、あんたコーヒー淹れるの?
 そしたら日曜日ここでやったらいいじゃない」

まさかの展開だ。

ホリさんは昔は奥さんと二人でお店に立ち、毎日お店を開けていた。
奥さんの介護もあり、現在は一人でお店に立っている。

昔は深夜1時までお店を開いていたこともあるという。
最近ではお店は19時頃までで、日曜日はお休み。

その日曜日にお店に立ったらどうだと言われた。
お店に来て3回目で、コーヒーを淹れていることもただの雑談で話しただけだったので、軽い冗談だと思っていた。

自分がマスターの代わりにお店へ立つことは想像していなかったが
一人でお店に立つマスターの手伝いができたらなと考えていた。
それならすみだへ足を運ぶ理由が増える。

そんな話をしていたらあっという間に30分は過ぎた。
時計を見ると19時近くなっていた。それでもマスターのおしゃべりは止まらない。

「その牛のシール、あんたの好きなところに貼っていいよ」
「どうせなら目立つところに貼りなよ。」といってガラス戸を指さした。

いやいや、それは恐れ多いです。。
常連さんが見たらなんと思うか。。

躊躇していると「おれの店だ。おれがいいっていうんだからいいんだよ」と
ホリさんは止まらない。

ええいっ。これもなんだかよくわからないけど面白い。
今はお言葉に甘えて貼らせてもらい、後で気に入らなかったら剥がすだろうと思い、ガラス戸に貼ることに。流れに身を任せてみた。

どこに貼ろうか悩んでいると、ホリさんも外に出てきた。

「HOLLYのOの中に貼ればいい。よく目立つ。」

Oの真ん中に貼るなんて悪目立ちじゃないか、と心のなかで突っ込んだ。

大事な常連のお客さんとお店で会ったときに、なんだあの子とならないようにOの真ん中は避けさせてもらい、HOLLYの右横にそっと貼らせてもらうことに。

こんなおもしろ不思議な日を記録に残しておきたいと思い、ホリさんに写真を撮ろうとお願いした。

私がキャップを被っていると、
「おれもあるよ」とキャップをお店の中へ取りに行き、一緒に写真を撮った。

お店の中へ戻り、また雑談が始まる。

「おれもこういうシールつくれるの?」とホリさんが尋ねる。

私の丸い形のステッカーと、縦長のどすこいドーナツのステッカーをホリさんに渡していた。

「おれもこういうの欲しいな」

つくれますよ、どれでつくります?とみんなでホリさんに確認する。

お店へ初めて来たときに渡してくれた茶色いマッチ箱を取り出してきた。

「このマッチ箱もあと少しでなくなっちゃうんだよ。でもお店に来たお客さんに渡したいじゃない。あんたたちみたくこうやってシールを渡してあげたらいいんでしょ。」

お客さんが喜ぶために、と考えているホリさんの優しさが見えた。

友人は二つ返事で「もちろん、つくりますよ」と答えていた。
どのデザインでつくるかホリさんの要望を確認し、
じゃあできたら持っていきますねと約束をした。

気づけばお店へついて1時間が経っていた。
そろそろ帰りますねと伝えると、「もう帰っちゃうの?」とホリさんは寂しそうだった。

いつもだともっと話していくのだが、この日は約束があり場所も遠いから
ごめんなさいと伝えお店を出ようとした。

「そうだ、仲間にもあんたのシールを配って宣伝するから何枚かちょうだいよ」

ホリさんの心意気が嬉しい。20枚ほど渡した。

「おれも貼れるやつ、あるよ。あげるよ、ちょっとまってて。」

そういって50枚の湿布を手土産に渡された。

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